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6月5日は落語の日 『極ラクゴ』を読もう! 【きょうのマンガ】

2015/06/05


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『極ラクゴ ~柳亭奇譚誘噺~』第1巻
安江うに(作) 平松伸二(画) 日本文芸社 \590+税


6月5日は「落語の日」。もちろんこれ、由来は六(ろく)と五(ご)で「らくご」という語呂合せ。
ところがこの記念日、じつはそう単純な話では終わらないのである。

というのも、この記念日を提唱したのは落語家の春風亭正朝ということになっているのだが、当の正朝本人は「あたしゃ知りませんでしたよ(笑)」と言っているのである。(ブログ「正朝通信」2008年6月6日を参照)
くわしい話は元の記事を読んでいただくとして、一回制定しようとしてお蔵入りになったはずの記念日が、いつの間にやら復活(?)して定着しているという、これ自体がなんだか落語のようなお話。
ある意味、「落語の日」らしい裏話かもしれません。

さて、そんな落語をテーマにしたマンガというのもたくさんありまして、すでにアニメ化も決定し、そちらの期待も高まる『昭和元禄落語心中』をはじめ、今やいちジャンルとして「落語マンガ」というものが成立しそうな勢い。
「このマンガがすごい!WEB」でも、立川志ら乃さんがチョイスした「目ききに聞くスペシャル」の企画がすでにあったりしますので、そちらもぜひ読んでいただきたいのですが、今回はちょっと奇妙な成り立ちの「落語の日」にふさわしい(?)、『極ラクゴ』をピックアップ。

作者は『ブラック・エンジェルズ』『ザ・松田』シリーズで知られる(もっとほかにもあるだろうが!と言われるかもしれないけど、いんだよ細けえことは!)平松伸二。
まぁそんなワケなので、世間のご期待どおりにバイオレンスも死人も(ついでに板垣総理も)飛び出す落語マンガだったりするのだけれど、どちらかといえば『どす恋ジゴロ』に近いノリの、人情も絡めたちょっといい話だったりします。

大筋としては、孤高の噺家である柳亭綺譚(りゅうてい・きたん)が人並み外れた話術によって、聞く者を演目の世界に引きこんでしまうというもの。
なので、たとえば「死神」の噺では、本当に地獄の深淵を覗きこむことになってしまうというしだい。その、ほとんど「新手のスタンド使い」レベルの能力を持った綺譚の落語によって、関わった人の人生がどう変わっていくのかは読んでのお楽しみ。

そして、数々の古典落語を大胆にアレンジしているものの「あれ? 正直もっとトンデモかと思っていたら、意外なほどちゃんと落語マンガだ!」と、平松伸二のダイナミックな作風のファンなら思うかもしれないが、これは原作を務める安江うにの力よるところが大きそうである。なにせこの方、落語に造詣が深い原作者というだけではなく、じつは平松伸二の奥方なのです。これが初の「夫婦合作」だそうで。

ちなみに落語にあまり詳しくない人でも、原作者による演目解説が各エピソードごとにバッチリ入っているのでご安心。
異色の落語マンガを楽しみつつ、古典落語の勉強もできてしまいますよ~。



<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

単行本情報

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