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『ぼくは麻理のなか』第6巻 押見修造 【日刊マンガガイド】

2015/09/04


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『ぼくは麻理のなか』第6巻
押見修造 双葉社 ¥600+税
(2015年8月10日発売)


『惡の華』の押見修造の好評連載作品、第6巻。

大学生活になじめず、下宿に引きこもりゲームとオナニー三昧の日々を送る小森は、ある朝、目覚めると秘かにストーキングしていた女子高生・麻理になっていた!
子どもから大人への通過儀礼としての青春モノの王道「男女入れ替わり」を踏襲しつつも、小森の方は麻理と入れ替わることなく、小森のまま普通に生活しているという不可解な設定はもちろん、麻理になった「僕」のムンと臭い立つように生々しい自意識のほとばしりの数々に、早くも著者の最高傑作!との呼び声も高い。

「僕」を避けていたはずが、ある出来事をきっかけに「僕」に惚れて行動がおかしくなった小森。「僕」を嫌悪していたはずが、急に「僕」を麻理扱いしてデレてくる依さん。
そんな新たな展開とともに、本巻ではこれまでの読者の推理や期待を一蹴する、さらなる謎が提示される――。

筆者も「思春期の歪んだ自意識=恋愛=相手との自己同一化」を描いた『惡の華』と、大人になりきれず過去を振り返ってばかりいる「僕」が異世界にトリップし、初恋の人と再会する『漂流ネットカフェ』の流れをくむものとして、コレってやっぱ「妄想オチ」でしょ……とすっかりわかった気になっていただけに、思わずギャフン!
楳図かずお『漂流教室』へのオマージュめいた「謎の電話」にしても、本巻でアッサリ種明かしをして裏切ってくれるあたり、押見修造という人は、やはり一筋縄ではいかない。

「僕はいつまで自分のことばっかりかんがえているんだ……!」と咆哮する「僕」は、もとの「僕」に戻れるのか? あるいは「自分」という呪縛から抜け出せるのか?
6巻にしてまったく中だるみすることなく、最後まで見届けずにいられない異様なテンションで展開中の本作。
押見氏には、辻褄をあわせることだけに腐心せず、破綻ギリギリの危うさで突き進んでほしい! と願わずにいられません。



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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