人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。
今回お話をうかがったのは、押見修造先生!
『このマンガがすごい!2011』オトコ編第10位ランクイン、アニメ化も話題となった『惡の華』完結から約3年――。
常に自身の代表作を更新し続けている、鬼才・押見修造先生の新連載は、"毒親"をテーマとした衝撃作!
まるで映画を見ているような圧倒的な画力、そして想像をはるかに超えてくる展開に、すでに押見先生の代表作候補としても名高い『血の轍』が、
『このマンガがすごい!2018』で第9位にランクイン!
編集部は3年ぶりに押見修造先生のもとへ駆けつけ、本作の知られざる制作秘話や、今後の展開についておうかがいしました!
2014年のインタビューはコチラ!
前編
“純愛”を考えていたら体操服を盗む話ができあがった。 『惡の華』押見修造【前編】
中編
告白したシーンを描いたら終わりのその先が見えた。『惡の華』押見先生【中編】
後編
14歳が一番エロい! そして次回作は……『惡の華』押見先生【後編】
14歳の思春期モノ、再び!
――押見先生の最新作『血の轍』が、「このマンガがすごい!2018」オトコ編で第9位にランクインしました。
押見 ありがとうございます。
――『惡の華』(2014年オトコ編18位)に引き続き「14歳」が主役の思春期モノです。その間に押見先生は『ハピネス』というエンタメ色の強い作品も描いていて、そちらもおもしろいのですが、「このマンガがすごい!」の読者には思春期モノが刺さるんだな……と。
押見 なるほど(笑)。
――『惡の華』連載終了直後のインタビューでは、「14歳が一番エロい」とおっしゃっていました。
押見 いいましたね。「14歳はエロい」だけだと、かなり不穏当な発言に思われそうですが(笑)。
――押見先生のいう「エロい」とは、顔とか体つきといった外見的な部分ではなく、「内面や自意識が漏れでてしまう」状態を指すんですよね?
押見 そうです。それを「エロい」というのは語弊があるのかもしれないですし、誤解を招くことも多いんですけどね。ただ、内面を無自覚に垂れ流してしまうのは、男女問わずに14歳という年齢が一番だと思います。だから「14歳が一番エロい」と。その思いは、今でも変わってませんね。
――読者的には「押見先生の思春期モノ、待ってました!」といった感じだと思いますよ。
押見 そうなんですかね(笑)。
――ランキングの集計期間中には第1集しか刊行されていないのに上位にランクインしたわけですから、みんな待ち望んでいたと思います。
押見 いや、ありがたいかぎりです。
――ただ、前回のインタビュー時に「思春期モノはもういい」「『惡の華』で出しきった」と……。
押見 いった気がします。
――では、なぜ再び「14歳」が主人公の思春期モノを描こうと思ったのでしょうか?
押見 連載開始までの経緯を話しますと、「ビッグコミックスペリオール」の担当編集さんから声をかけていただいたのが大きいです。担当編集さんに自分の思い出話をしたり、まあ……、カウンセリングのようなものをしてもらったんです。『惡の華』が終わったタイミングでは、すべて出しきった気がしていたんですけど、まだ自分のなかで決着がついていない部分が見えてきた、というか……。思春期に限った話ではないんですけど、自分にとって未解決の部分があるな、と思いました。そのへんを「今度こそ」という気持ちで描き始めました。「まだ描ききれていなかった」ことが描けるようになってきたというか、ひとつの作品で一気に全部はだせないものだなぁ、と。一個だすと、また次のものがでてくる感じです。
――このキャラだとここまでだせるけど、この問題を語るには別のキャラが必要だな、ということもありますか?
押見 まあ、僕の場合、主人公はだいたい同じなんですけど(笑)。だから、女性側のほうが大きいですかね。
――女性側、とは?
押見 毎回ヒロインには、猫目で涙袋があって、ショートカットの女の子を描いてきてます。『惡の華』だと仲村さん、『漂流ネットカフェ』では遠野果穂。
――『血の轍』だと吹石さんがその系譜ですか?
押見 そうです。彼女たちは造形的には似ていても、ストーリー上で担う役割は毎回異なるようにしています。だから今回も吹石さんという、歴代のヒロインに似た女性キャラがでてきますが、『血の轍』は静子ママがヒロイン。……ヒロインというのとは、またちょっと違うのかもしれないですけど。
――主人公を取り巻く状況が変わるわけですね。
押見 主人公に関わってくる人が変わることで、描けることが違ってくるものだと思っています。
――同じ「14歳」を描くにしても「別冊少年マガジン」(『惡の華』掲載誌)より「ビッグコミックスペリオール」(『血の轍』掲載誌)のほうが読者の年齢層が高いですが、そのあたりは意識されましたか?
押見 今回は青年マンガを描こうという意識がありました。主人公ががんばって活躍するような話ではなくて、なにか本質的なところが表現できればいいはずだ、と。マンガのフォーマットから外れていても、コアなところが描ければいいと思っています。