『嘘解きレトリック』第4巻
都戸利津 白泉社 \429+税
(2015年1月20日発売)
話す相手の嘘が聞き分けられる鹿乃子(かのこ)と、頭のキレる貧乏探偵・左右馬(さうま)の事件簿、第4巻。
今巻には、“名探偵”左右馬に憧れる少女・千代が妄想に振り回されながらの迷推理(第15話)に始まり、左右馬が親しくしている刑事・端崎馨の行方不明事件(第16・17話)、孤島で起こった殺人事件の捜査依頼(第19・20話)が収録されている。
嘘がわかるという特殊能力をもつ鹿乃子にも、「なぜそんな嘘をつくのか」まではわからない。
ゆえに本作は、嘘をきっかけに事件のトリックを解き明かす推理ものとしてばかりでなく、その嘘の本質……犯行を隠す嘘、だれかをかばう嘘、相手を陥れる嘘、相手を思っての嘘など……を推理し、裏づけて、犯人および登場人物の心理に迫る人情ミステリーに仕上がっている。
相手の嘘がわかってしまうことで、小さいときから孤独な思いをしてきた鹿乃子。だからこそ彼女は正直であり、自分に厳しく、そして信頼というものの本当の大切さを知っている主人公だ。
また、そんな彼女を受けいれ、近くに置いている左右馬も、鋭い洞察力から「なんでもお見通しって感じで、ちょっと怖い」と言われてしまう人物。
そんな2人のまっすぐなキャラクターは好感度が高く、嘘をテーマにした本作を明るく優しく彩ってくれる。
第18話は、そんな2人の素敵な関係性が描かれた、心温まるスペシャルショートだ。
『心霊探偵八雲』のコミカライズなどを手掛けた都戸利津によるキュートな絵柄、昭和初年を舞台に描かれるレトロモダンの洒落た世界観にも心躍るこの“路地裏探偵活劇”、これからの展開も注目の良作だ。
<文・藤咲茂(東京03製作)>
美酒佳肴、マンガ、ガンダム、日本国と陸海空自衛隊をこよなく愛し、なんとなくそれらをメシのタネにふらふらと生きる編集ライター。