『超嗅覚探偵NEZ』
那州雪絵 白泉社 \552+税
2月1日は「ニオイの日」。由来は「に(2)お(0)い(1)」の語呂合わせで、「ファブリーズ暮らし快適委員会」(P&G)が2000年に制定。においに敏感になることを意識してみよう、というメッセージがこめられているのだという。
視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感のなかで、じつはあまり意図的に使っていないのが嗅覚かも? 測定する機会もないし、もしかしたら、その能力は個人差が大きいかもしれない。
『超嗅覚探偵NEZ』は、超人的な嗅覚を発揮して、事件を解決に導く探偵が活躍するコメディタッチのミステリー。
ちなみに“NEZ”はフランス語で“鼻”の意味で、“ネ”と発音する。
並外れた嗅覚の持ち主である松下は、ペット捜索を専門とし、どんななくしものでも見つけ出してしまう“嗅覚探偵”だ。
そんな彼がひょんなことから高校の同級生で、現在は刑事である神保と再会。神保は常々、どんな優れた警察犬でも結局は意思の疎通ができない不便を嘆いていた。
松下は神保にとって、理想の警察犬!? 苦心の結果、松下を仲間に引き入れた神保は、ともに難事件に取り組むことになる。
那州雪絵といえば男子寮を舞台とした『ここはグリーンウッド』を思い浮かべる方も多いだろう。謎解きはもちろん、あの軽妙な掛け合いは、本作でも大きな魅力となっている。
当初は非協力的な松下が、しだいに神保と心を通わせあっていく展開も読みどころ。もちろん脇キャラも、ユニークな曲者ぞろい!
そして、犬以上の嗅覚を持つ者の苦しみがひっそり織りこまれるあたりも、ドラマに奥行きをもたらしているのだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」