人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。
今回お話をうかがったのは、松駒先生!
とあるコンビニで深夜バイトにはげむ松駒くん(就活浪人)。ある日、新しく入ってきた新人バイトの登場で、平穏だった夜勤に波乱の予感!?
ゆとり世代ならぬ“さとり世代”の超大型新人「ニーチェ先生」こと仁井くんと松駒くんをはじめ、個性的な面々が繰り広げるコンビニバイトの忙しくてゆるーい毎日。原作者である松駒先生がコンビニバイト中に出会った、規格外の新人バイト「ニーチェ先生」の言動をツイッターでつぶやいたところ「おもしろすぎる!」と一躍話題となり、今や閲覧総数は400万以上!!
ツイッターを騒然とさせた松駒先生のコンビニバイトライフはマンガ化されるや人気を集め、こちらも発行部数累計100万部突破の大大大ヒット!!! さらにドラマ化も決定するなどその人気はもう止まらない。今回は、原作の松駒先生に作品誕生の裏話を直撃しました! 「ニーチェ先生」の素顔も語られる!?
ツイッターのまとめが100万プレビュー超え!
―『ニーチェ先生』がツイッターから生まれた作品というのは有名な話ですが、まずはマンガ化にいたった経緯をお聞きしたいと思います。松駒先生は、作中に登場するコンビニ店員の“松駒くん”ご自身なんですよね。
松駒 そうです。大学1年の時からコンビニでバイトを始めて、今も同じところに勤めてますので、もう5年以上くらいになります。
―そこに後輩として、「ニーチェ先生」こと“仁井くん”が入ってきたわけですね。
松駒 私が勤め始めて2年くらいした頃だったと思います。彼が入ってきてすぐに、あの「神は死んだ」発言がありまして……こいつはすごい新人が入ってきたと(笑)。
―1巻の冒頭のエピソードですね。
松駒 友人の間で話したらたいへんウケまして。ツイッターに書いてみたら1万リツイートくらいされて……この時はホントにごく軽い気持ちで、世のなかに広めようというつもりなんてなかったんですけど。そのあとは、最初ほどの反応はなかったのですが、彼に関するつぶやきをもっと読みたいという人が少数ながら出てきまして。その方たちに向けて、2012〜13年くらいにかけてのつぶやきを「業務日誌」というかたちで2013年の4月にまとめて公開したところ、110〜120万プレビューにもなって……。
―それはすごい数字ですよ!
松駒 そんなに多くの人が見てくれると思っていなかったので、今でも驚いているくらいです。その直後に、いろいろな出版社さんからマンガ化しないかとお声がけいただいたんです。
―あ、かなり複数の出版社からオファーがあったんですね。
松駒 はい。最終的に決め手になったのは、自分が中学から高校にかけてたくさんの作品を読んできたメディアファクトリー(現・KADOKAWA)さんといっしょに仕事をしたいという気持ちでした。当時、就職活動をしていたんですが、そっちがうまくいってなかったこともあり、失うものが何もない状況ということも手伝って(笑)。
―ツイッターで人生が一変したんですね。就活のひとつの選択肢くらいのつもりで?
松駒 いや、それが生業になるとは思っていなかったです。いい思い出作りになればいいな、くらいの……。
―まさかここまで長く続くとは思いもしなかった?
松駒 正直言ってその通りです。1巻が発売になってから怒濤の勢いで反響があって……本当に驚きました!
―それにしても「さとり世代」という言葉は秀逸でしたね。
松駒 この言葉はまとめ記事で使って気に入っていたので、そのまま残そうと。コンビニにはいろんな世代の方が働いていますが、ここまでのジェネレーションギャップを感じたのは“仁井くん”が初めてでした。といってもぼくと彼はたった2歳しか違わないんですが。
―どこかに世代の切れ目があるんですね。ひとくくりには言えないでしょうけれど、社会の影響が顕著に表れるような。
松駒 ぼくはいわゆる「ゆとり世代」ですけど。まあ“仁井くん”は特殊すぎて規格外だと思いますが、いっそ世代と言い切ってしまおうと。
二足のわらじをはく覆面作家・松駒先生の密かな楽しみとは!?
―最初にツイートを始めた頃は、“仁井くん”のモデルご本人には内緒だったんですよね。いつ頃バレたんですか?
松駒 つぶやき始めてから半年から10か月くらいの頃だったと思います。「これ、どういうことなんですか」と、見慣れたアイコンを見せられて問い詰められました。バイト先の休憩室で(笑)。
―それまでは本人にバレないように気をつかっていたんですか?
松駒 まあ人の言動を勝手に文章にして公開するというのはほめられたことじゃないですから……。
―けっこう気まずかったですか?
松駒 でも、その頃はまだ「まとめ」を作る前だったので、あとから思うとちょうどいいタイミングだったかもしれません。「これからも個人を特定できないように細心の注意を払う」と約束して……それなら続けてかまわないと本人からの了承をもらうことができました。「まとめ」を作った時も、本人に許可を得ています。
―とはいえ、モデルご本人もまさかマンガ作品にまで発展するとは思わなかったでしょうね。
松駒 マンガ化が決まった時も、そんなに大ごととはとらえてなかったようです。
―リアル“仁井くん”も、今もコンビニ勤めは続けているんですか?
松駒 はい。今も同僚として勤めています。
―『ニーチェ先生』はコンビニの棚にも並びますし……不思議な心境でしょうね。
松駒 そういえばわりと最近、ぼくがレジにいる時に、『ニーチェ先生』を持ったお客さんに初めて対応したんです。動揺しましたけど……これ、マンガ化された時からの夢だったんですよ。そうなった時、なに食わぬ顔をして対応するっていうのが。袋に入れながら、「このマンガ、おもしろいんですか?」なんて聞いちゃいました。
―えっホントにそう言ったんですか?
松駒 はい。「すごくおもしろいですよ」と言ってくださって、感激しました!