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2月18日は冥王星の日 『銀河鉄道999』を読もう! 【きょうのマンガ】

2016/02/18


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

2月18日は冥王星の日。本日読むべきマンガは……。


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『銀河鉄道999 1 出発のバラード』
松本零士 小学館 ¥1,500+税


さかのぼること86年前の今日。ローウェル天文台(米)に勤務する天文学者のクライド・トンボーが冥王星を発見した。
発見の前月(1月23日と1月29日)に撮影された写真の比較から、海王星よりも彼方にある太陽系9番目の惑星を確認したのだ。

ここまで発見が遅れていたのは、15等星という異様な暗さのため。
この暗さにちなんでギリシア神話に登場する“冥府の神”の名をもらって「pluto(プルート)」と命名された。名づけ親は11歳の英国少女である。

てなわけで、本日は冥王星の日……なのだが、90年代以降、冥王星と近い質量の天体が続々と見つかり「冥王星を惑星と呼んでいいのか?」論争が勃発!
2006年には惑星の定義が正式に定められ、あわれ冥王星は準惑星に降格へ。いまや「すいきんちかもくどってんかいめい」ではなく「すいきんちかもくどってんかい」なのである。あぁ、かわいそうな冥王星。

この冥王星マイナー降格処分に憤慨としたのが、我らが松本零士先生である。
2006年8月25日の毎日新聞には「冥王星こそが太陽系の果てで、そこを離れることが太陽系から外宇宙に旅立つことだと描いてきた。今回の決定は、論理的には正しいのだろうが、多くの人が少年のころから抱いていた夢、心情的なものにも配慮してほしかった。心構えができていないうちに突然決まってしまった感じがする」とコメントを発表、ガッカリ感の強さがうかがいしれる。

この「太陽系から外宇宙に旅立つ」ことを描いた象徴的なエピソードが、『銀河鉄道999』の第6話、「迷いの星の影(シャドウ)」である。
鉄郎とメーテルの旅の序盤を締めくくる太陽系最後の停車駅・冥王星。
「ここから先へ行って、無事に生きて帰れるのだろうか」と旅人が思案するので“迷いの星”と呼ばれている。近づいただけで999の車内まで気温が下がるのには鉄郎もびっくりだ。

さらに驚くことに、冥王星の氷の下には人間がズラリと横たわっていた。機械の体を手にした人たちの、もとの体が眠っているのだ。
この生身の体たちの番をしている“のっぺらぼう”の女管理人がシャドウである。
シャドウは鉄郎に氷づけとなった美しい昔の姿を見せつける。そして「どんな顔にしても満足できないから顔を作らなかった」と告白する。

一方、壮大な物語のキーポイントとなるのが、氷漬けで眠る人々を見ながらメーテルが涙を流す場面。
メーテルは機械の体であり、もとの体がこの地に眠っていることを示唆しているのだ。松本零士の大宇宙において、冥王星がいかに重要な“惑星”であったか、おわかりいただけるだろう。

昨年(2015年)の夏、NASAの無人探査機「ニュー・ホライズンズ」が、初めて冥王星の鮮明な撮影に成功。
謎に包まれていた冥王星は、表面にハート型の模様があるキュートな天体だった。このハートの部分こそが、氷の大平原なのだそうだ。
うーん、じつにロマンチック。メーテルの美ボディもここに眠っているのね。

最近は冥王星に変わる太陽系9番目の惑星の存在もウワサされるようになった。でもってヘタすりゃ新しく発見した惑星が新・冥王星になっちゃう可能性もあるとか!?
いくらなんでも、そんなの不憫すぎる。
僕ら昭和生まれの松本大宇宙育ちは、生涯、元祖・冥王星推しでいきますから!



<文・奈良崎コロスケ>
マンガと映画とギャンブルの3本立てライター。中野ブロードウェイの真横に在住し「まんだらけ」と「明屋書店」と「タコシェ」を書庫がわりにしている。著書に『ミミスマ―隣の会話に耳をすませば』(宝島社)『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』(絶賛公開中)のパンフレットに参加しております。

単行本情報

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