日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『キャプテンハーロック ~次元航海~』
『キャプテンハーロック ~次元航海~』第3巻
松本零士(作) 嶋星光壱(画) 秋田書店 ¥562+税
(2015年11月20日発売)
どくろの旗を掲げ、星のはてをさすらう宇宙海賊キャプテンハーロック。松本零士が生み出した屈指の人気キャラクターであり、その名前は様々な松本作品で目にすることができる。
特にアニメ映画『銀河鉄道999』('79)におけるゲスト出演は、「男なら危険を顧みず、死ぬと分かっていても行動しなければならないときがある。負けるとわかっていても戦わなければならないときが――」という名台詞とともに記憶している方も多いだろう。
そんな彼が主役を務めたコミック『宇宙海賊キャプテンハーロック』('77)をリメイクした本作は、有史以前より地球に潜伏していた植物生命体マゾーンとハーロックたちの戦いを描いている。
宇宙戦艦ヤマトとガミラス帝国の戦いから約1000年、星野鉄郎が機械化帝国を滅ぼしてから数年後にあたる物語だ。
そう。松本作品といえば、複数の作品がひとつの世界観を共有していることで知られているが、その姿勢は本作でも貫かれている。
たとえば、「こんなこともあろうかと」でおなじみの真田志郎は、現在も連邦政府によって遺伝子と記憶が永久保存されており、ガイアフリートの一員として活躍しているらしい。もちろん、クイーンエメラルダスやダイバーゼロといったハーロックゆかりのキャラクターも姿を見せている。
また、これまでコミック以外の媒体で発表されていたハーロック作品からも各種要素が引用されており、本作におけるハーロックのライバルであるガイアフリート副司令長官・キリタは、TVアニメ『宇宙海賊キャプテンハーロック』('78)の切田長官とOVA『OUTSIDE LEGEND ~The Endless Odyssey~』('03)のイリタ、あるいはCGアニメ映画『キャプテンハーロック -SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK-』('13)のイソラを掛け合わせたような設定と外見の持ち主だ。
第3巻より登場するトチローの娘・まゆも、コミックではなくアニメを出典とするキャラクターである。
このように本作で初めて『ハーロック』に触れる読者は当然のこと、年季の入った松本ファンにとっても非常に楽しめる作品となっている。
肉感的に描かれた女性キャラクターには賛否両論あるだろうが、ヤッタラン副長や魔地機関長といった面々は原典どおりの等身で描写されているし、何よりも松本作品の持つ“詩情”を忠実に受けついでくれているところがうれしい。
原作コミックでは描かれなかったハーロックとマゾーンの決着も含め、これからの展開が楽しみな作品だ。
<文・ガイガン山崎>
“暴力系エンタメ”専門ライター。「アルカディア号と機械化人って、何がどう違うの?」とは口が裂けても言わない、空気の読めるナイスガイです。