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4月19日は福島第一原発4基が法的に廃止された日 『いちえふ』を読もう! 【きょうのマンガ】

2016/04/19


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

4月19日は福島第一原発4基が法的に廃止された日。本日読むべきマンガは……。


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『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』第1巻
竜田一人 講談社 ¥580+税


東日本大震災による津波の影響で、メルトダウンや建屋の爆発が連続して発生、チェルノブイリと同様の重大事故を引き起こした福島第一原子力発電所。
それから13カ月後の2012年4月19日、1号機から4号機までが電気事業法に基づいて廃止となった。

その直後から、福島第一原子力発電所=1F(いちえふ)で働き始めた40代後半の漫画家がいた。
竜田一人(仮名)だ。
首都圏在住の売れない漫画家の竜田は、2012年6月から約半年にわたって1Fで現場作業員として働いたが、実際に自分の目で見た福島と、県外で語られるイメージのギャップに「描かざるをえない」と決意。1Fで働く作業員の日常をニュートラルな視点でつづった読み切り『いちえふ ~福島第一原子力発電所案内記~』を発表し、2013年の第34回MANGA OPEN大賞を受賞。
「モーニング」に掲載されるや、国内外で大きな反響を呼ぶことになった。

その後、『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』と改題されて「モーニング」にて連載がスタート。
コミックス第1巻もスマッシュヒットを飛ばし、『このマンガがすごい!2015』オトコ編で4位を獲得したのも記憶に新しい。

さて。すごい、すごいと言っても『いちえふ』にマンガ的なスペクタクルは皆無。
ルポルタージュ形式で、どんな人が集まり、どのようなものを身に着け、どのような環境下で、どのような作業をし、どんな危険があり、どのくらいの日銭を稼いでいるのかが淡々と描かれる。

野生化した動物や、無残な姿になった町や建物も微細に活写されるが、だからといって「原発反対!」と声高に叫ぶことはない。
粛々と働く作業員たちへのリスペクトと、少しずつ作業が進んでいく喜びを前面に出している。多分に都市伝説的なウワサ話が出回り、マスコミが不安をあおりまくっていた当時、しっかりと福島の現実を伝えてくれた本作に地元の人たちは拍手を送ったものだ。

竜田は『いちえふ』連載後の2014年も再び1Fに現場復帰し、被ばく量を抑えるために仲間と連携プレーをするテクニックを披露、知恵を絞りながらワイワイと作業をする彼らはじつに楽しそう。
もちろんかたづけなければならない問題は山積しているが、現実から目をそらし、まやかしの真実をヒステリックにがなりたてるのは愚の骨頂だということがよくわかる。

とにかく冷静に現実を把握し、しっかりと前を向くことを、まだ震災や事故から間がないうちにマンガという形で提示してくれた竜田には脱帽だ。

とりあえず第3巻をもって一時終了とのことだが、1Fの作業が終わったわけではない。
近い将来、竜田が再び現在進行形の福島を伝えてくれることだろう。



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。4月23日公開『アイ アム ア ヒーロー』の劇場用プログラムに参加しております。
観てね。

単行本情報

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