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『ソワレ学級』第1巻 靴下ぬぎ子 【日刊マンガガイド】

2016/05/12


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ソワレ学級』


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『ソワレ学級』第1巻
靴下ぬぎ子 徳間書店 ¥620+税
(2016年4月13日発売)


高校時代だれしもが思う。「自由になりたい」。

でも自由ってなんなんだろう?

定時制の高校が舞台の、群像劇。
まわりから噂されるほど目立つ美少女の二藍(ふたあい)るり、通称「るり」と、周芳紅巴(すおう・くれは)、通称「べに」は、「行事とかいっさいないところに行きたい」「自由に過ごしたい」という理由で、定時制を選んだ。

べには、るりが好き。るりにべったりくっついて、離れない。
ところがるりは、定時制に通うほかの仲間とどんどん親しくなる。しまいには「行事がいやだ」と言っていたのに、定時制で文化祭を企画した際に乗ってしまう。
べには、置いていかれた感覚に襲われ、焦り始める。

この作品がうまいのは、物語を2人の世界に閉じこめていないことだ。
たとえばるりが働くバイト先の先輩たちのシーン。べにとの間の、恋愛でも友情でもない不思議な気持ちに戸惑う彼女に、「どういう関係になりたいのか」をアドバイスする。
少女たちが苦しんでいても、大人はそれを乗り越えられるのを、経験上知っている。

また主人公の少年・柳千草(やなぎ・ちぐさ)が2人を見ていることで、バランスがよくなっている。
まじめでマイペースな彼は、2人の間に踏みこみすぎず、冷静。彼は適度な距離感に立っている。

SNSを使った人間関係の表現もおもしろい。
べには自撮りが趣味で、ネットへの発信や、他人のあしらい方がうまい。しかし「るりといっしょにいたい」というのが彼女の「自由」なので、学校の交友関係をあまり広げない。
一方るりはSNSが苦手で、知らない人間の一つひとつの言葉に傷つく。逆に、目の前にいる学友やバイト仲間たちと仲よくするため積極的に動く。

どちらが正しい、ではない。人間関係をどうわたろうとしているのか、の問題。

自由とは、自分のためだけのものじゃない。ましてや人にあわせることでもない。
大事なのは、人とのつながりに、どのような折りあいをつけるかだ。

いいぞ、もっと悩め少女たち(少年も)。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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