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『サチのお寺ごはん』第2巻 かねもりあやみ(作) 久住昌之(案) 青江覚峰(監) 【日刊マンガガイド】

2016/05/28


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『サチのお寺ごはん』


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『サチのお寺ごはん』第2巻
かねもりあやみ(作) 久住昌之(案) 青江覚峰(監) 秋田書店 ¥619+税
(2016年5月6日発売)


『孤独のグルメ』の久住昌之が原案協力し、浅草に実在する緑泉寺の住職で料理僧としても活動する青江覚峰が監修を手がけていることから、少女マンガファン以外からも、じわじわと注目を集めている本作。

仕事も恋愛もいまいちツイてない27歳「臼井幸」が、緑泉寺のお坊さん・源導さんに出会い、おいしいお寺ごはんによって少しずつ変わってゆく……という、アラサー女子×ごはんのいやしストーリーは、いまや鉄板ともいえる人気がある。

それだけ疲れてるアラサー女子が多いということか? 男は裏切っても、ごはんは裏切らないもんなあ……てなことはさておき、やっぱりおいしいごはんは確実に幸せをもたらしてくれるし、それが源導さんはじめ、それぞれに個性的で素敵なお寺ボーイズといっしょにワイワイ楽しく食べられるのなら、まさに至福というか。正直、幸がうらやましくってしょうがありませんっ!

精進料理とかベジとか、動物自然愛護的なロハス信仰は苦手という人も、ちょっと待った~。

大ぶりの厚揚げと夏野菜を豪快に使った、味噌や練り胡麻が隠し味の「お寺カレー」、本来は捨てる野菜の皮や冷蔵庫の残り物を使った「揚げたての飛竜頭」など、肉食男女も思わずそそられるメニューに加えて、本巻ではついにステーキも登場。

闇雲に肉をタブー視するのではなく、「あるものをありがたくいただく」という源導さんの柔軟で地に足のついたスタンス。「命である食と向きあうことは自分自身に向きあうことでもあります」という言葉には、毎度ながらハッとさせられる。

現代の食イデオロギーは、肉はもとより、牛乳、油、炭水化物……など、何かにつけ「善か悪か」といった極論に走りがちだ。
それに対して、精進具材と煩悩具材(イクラとか穴子とか各々が食べたいネタ)を半分ずつ盛りつけ、食べるうちに境界線が曖昧になってゆく様から、人間の曖昧な心のありさまを表現した「彼岸寿司」には、眼からウロコ! つーかコレ、単純に食べてみたいっ!

幸が合コンで知りあった有村さんとの恋の行方、源導さんの過去など、食以外の人間模様もあれこれ気になるけれど、まだまだ焦らず、おいしいごはんといっしょにゆっくりと楽しみたい所存です!



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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