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『へうげもの』第22巻 山田芳裕 【日刊マンガガイド】

2016/07/17


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『へうげもの』


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『へうげもの』 第22巻
山田芳裕 講談社 ¥552+税
(2016年6月23日発売)


今年のNHK大河ドラマは、三谷幸喜の脚本による『真田丸』である。
主役の真田信繁(幸村)役には堺雅人がキャスティングされ、年初の番組開始以来、なかなかの好評を博している。
そもそも「真田丸」とは、慶長19(1614)年の大坂冬の陣において、豊臣方として参陣した信繁が大坂城の平野口に築いた出丸のこと。信繁はこの出丸にこもって奮闘し、徳川方を大いに苦しめたのである。

織田信長治世下の天正5(1577)年に物語が開始した『へうげもの』も、最新22巻では大坂冬の陣へと突入。いよいよ真田丸での攻防が描かれる。

さて、一方で主人公の古田織部はすでに隠居して家督を嫡男の重嗣に譲っており、現在では将軍・徳川秀忠の茶頭として茶道指南役を務めている。
茶人として名実ともに当代一となった織部は、豊臣家と徳川家の和睦「豊徳合体」を画策し、茶室を舞台に暗躍する。

本作の前半部分は「茶の湯で身を立てる」出世譚としての色彩が強かったが、22巻現在は政治的根回しのための暗闘――ポリティカル・サスペンスとしての側面を強く打ちだしているのが特徴だ。
自身の大願を成就するために、清濁あわせ飲んだ腹芸を展開するのは、さながらかつての師・利休のようでもあり、その胆力に圧倒されることだろう。

また、俵屋宗達が水墨画に覚醒するところも、今巻の見どころのひとつ。
宗達の代表作といえば、現在は京都国立博物館に収蔵されている国宝「蓮池水禽図」だ。墨のにじみを利用した「たらしこみ」という技法が特徴的なこの名画が、いよいよ今巻で描かれることに。

織部を信奉する宗達だが、織部によって追いこまれ、しごかれ、そしてある事件を契機としてとうとう才能を開花させる。
われわれも「国宝誕生」の瞬間に立ち会おうではないか。

連載開始からそろそろ11年を迎える長寿作だが、あいかわらずフレッシュな見ごたえを提供してくれる「乙」な作品である。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

単行本情報

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