『へうげもの』第1巻
山田芳裕 講談社 \524+税
今から416年前にあたる慶長4(1599)年2月28日。千利休の弟子であった古田織部が、自分で焼いた茶器を用いて茶会を開いた。この唯一無二の奇抜で斬新な茶器は、のちに“織部焼”と呼ばれることになる。
お膝元である岐阜県土岐市は、1988年にこの日を「織部の日」と制定した。
この古田織部の名を世間に広めることに一役買ったのが、2005年に「モーニング」でスタートした山田芳裕の『へうげもの』だ。
「へうげもの(瓢軽者)」の「へうげる」は、「ふざける」「おどける」という意味である。
主人公の古田佐介(後の古田織部)は安土桃山時代に活躍した戦国武将。
茶の湯や美術品をこよなく愛する粋人で、いわばオタクのパイオニア的存在といえよう。
織田信長に仕え、出世も考えている佐介ではあるが、気持ちは常に着物や建築物、美術品や調度品に向かっている。そんなオタク武将が、好奇心と物欲を武器にして時代を駆けぬけていく様に加えて、天下の趨勢や個性的な戦国武将たちの生き様が、山田芳裕ならではの豪快なデフォルメと解釈で描かれる。
『このマンガがすごい!2007・オトコ版』では3位、つづく『このマンガがすごい!2008』ではオトコ編2位と、2年連続でトップ3に入る快挙を達成。
2011年にはNHK BSプレミアムにてテレビアニメ化され、こちらも好評を博した。
すでに連載は10年目に突入し、織田信長→豊臣秀吉→徳川家康と三傑に仕えてきた織部の物語も終盤戦。
1615年に没するまであと数年、織部がひょうげた最期を迎えるその日まで、しっかりと見届けたい。
<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。4月4日公開・松尾スズキ監督『ジヌよさらば~かむろば村へ~』の劇場用プログラムに参加します。
「ドキュメント毎日くん」