『茶柱倶楽部』第6巻
青木幸子 芳文社 \620+税
(2014年9月16日発売)
『茶柱倶楽部』は、「お茶」をめぐる冒険を描いた作品。
日本各地のお茶を訪ねて国内を飛び回っていた初期から、国境を越えて台湾へ渡りし時代をも越えて大日本帝国の植民地時代の痕跡をたどり、今度は沖縄で「日本のお茶とは?」という根本的な問いに直面する。
「お茶と歴史」というと、歴史の勉強のような退屈な印象を受けるかもしれない。しかし本作はエネルギッシュな主人公・伊井田鈴と、彼女が行く先々で出会う人々のヒューマンドラマとして構成されている。そのため、読者は作品を読みながら、結果的に歴史を学ぶことができる。
とはいえ本作でもっとも大事なのは、歴史が学べることでも、心温まるヒューマンドラマが描かれていることでもない。お茶を飲んで一息つく「あの感じ」が、見事に表現されているというところだ。
本作には様々な種類のお茶の、様々な淹れ方が紹介されている。ひとつひとつの種類、それぞれの淹れ方を実際に知らなくても、その体験を疑似的に味わえる。
美味しいお茶をちゃんと飲む。そんな体験を日常的にしている人はどれくらいいるだろうか。本作をただ読むだけで、そんな貴重な体験ができる。それが本作のキモなのだ。
最新刊となる第6巻では、舞台となる沖縄のさんぴん茶や、近年復活し話題になってきている「ぶくぶく茶」が登場する。みなさんは「ぶくぶく茶」をご存じだろうか。さんぴん茶とお米を使い、泡立てたソフトクリームのような外見のお茶だ。
巻末には、作中に登場したお茶を実際に買えるお店のリストが掲載されている。作中で気になったお茶を取り寄せて飲んでみるのもオツだろう。ぜひ試してみてほしい。
なお、主人公が「日本中のお茶と出会える移動喫茶店」を始める第1話が、「週刊漫画TIMES」の公式サイト内で試し読みできるので、気になった方には読んでみてもらいたい。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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