新装版『夏子の酒』第1巻
尾瀬あきら 講談社 821
一般的に7月1日は海開きや山開きで知られているが、酒造・醸造業界にとっても重要な一日となる。
というのも、酒造・醸造業界のカレンダーは7月1日から新年度(醸造年度)に切り替わるからだ。醸造年度を越した酒は、すべて「古酒」となる。
さて、日本酒業界を題材としたマンガといえば、尾瀬あきら『夏子の酒』をおいてほかにない。
主人公・佐伯夏子は、広告代理店で働くOLだったが、家庭の事情により、実家の酒蔵を継ぐことになる。夏子は幻の酒米「龍錦」を復活させ、銘酒を作ろうとするのだが、日本酒業界の問題(三倍醸造酒やアルコール添加など)に加え、米作農家問題(減反や後継者問題など)も、彼女の前に立ちふさがる。
青年マンガ誌「モーニング」に連載されていただけあって、骨太な社会派ドラマが展開されるが、本作は、そうした“問題提起”に主眼が置かれているわけではない。あくまで夏子と家族や友人たちが織りなす人間模様こそが本作品のキモなのだ。
日本酒や酒米造りに愛情を注いでいく夏子は、やっぱり魅力的なわけですよ(実写ドラマの和久井映見もかわいかった!)。
まるで芸術品のように輝く夏子の作った酒に、下戸も上戸も生唾を飲み込むはずだ。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。