『ボクガール』第3巻
杉戸アキラ 集英社 \514+税
（2014年9月19日発売）

「僕のおチンチンが無い！」……女顔で男子からしょっちゅう告白される（性別がわかった後でも）鈴白瑞樹は、神さまロキのイタズラで、本当に女の子にされてしまった。
全年齢向け一般誌では不作だった、TS（トランスセクシュアル＝性転換）マンガのビッグウェーブがやってきた!!!

トイレはどうするの？　全寮制で男子のお風呂に入るドキドキ、パンティを履くと後戻りできなくなっちゃう……TSものが取得すべき必修単位はぜんぶ取っていて100億点満点。
そのつもりで見たらそう見える、そう思わなきゃオトコに見えなくもない、内角すれすれの微乳も素晴らしい。アニメでもマンガでも巨乳にしがちなんですが、「さらしがボン」ですぐ周囲にバレてスリルがないじゃない。ノーモア巨乳！
この幸せなひとときがいつまでも続きますように……というささやかな願いは、TSものではたいてい叶えられない。もういいかー、女の体もいいじゃないと、受け入れたら終わってしまうから。

瑞樹くんは「女になりきること」に頑張って抵抗する。親友の猛も瑞樹に惹かれながら必死に踏みとどまる。でも、ついチュー。崩れかけた「友達」と「恋人」の壁を支えよう、でもカラダは求め合っちゃう。そんなつかず離れずの2人がホントいい。
だから、表情が命。男同士なんだしとスッパリ脱いでた時より、胸を隠しながら意識して恥じらうほうがエロい。なんで「好き」と言われて悶々としてるんだろう……自分の気持ちがわからない、男と女を揺れ動く瑞樹の表情がたまりません。

おかげで瑞樹が片想い、でも本人は猛に片想いのヒロイン藤原さん（巨乳）が空気になってましたが、下着メーカー御曹司の変態・山田が乳首に絆創膏を貼る瑞樹に股間をフッジサーン！させた回から、恋模様もテコ入れ。
最初から瑞樹を女だと思ってグイグイ来る山田に刺激され、藤原さんもヒロインらしくなり、猛も自分の本当の気持ちに向き合い始めた。
このドラマのうねりを長期連載につなげてください、TSものは日本マンガの宝です！

＜文・多根清史＞
「オトナアニメ」（洋泉社）スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』（宝島社）『教養としてのゲーム史』（筑摩書房）、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』（ともに太田出版）など。