『ピアノのムシ』第1巻
荒川三喜夫 芳文社 590+税
8月8日は「鍵盤の日」。ピアノの鍵盤が88鍵ということに由来している。
ちなみに、初期のピアノは49鍵だったそう。「もっと音域を増やしてほしい」という作曲家の要望を受けて、少しずつ技術革新が進み、最終的に88鍵に落ち着いたのは、これが人の耳が聴き取れる“可聴音域”に即しているためといわれている。ピアノに縁がない人には、ちょっとしたウンチクになるかも?
さて、そこで本日ご紹介するのは、華やかな演奏家を裏で支えるピアノ調律師を主人公とした『ピアノのムシ』。
ピアノはとてもデリケートな楽器で、ほうっておくと音程が狂ったり、鍵盤が弾きにくくなってしまうもの。調律師の仕事もさまざまで、ただ音程を正確にチューニングしたり、とおりいっぺんのメンテナンスするだけでなく、演奏家好みの“音色や弾き心地を作る”といった役割を請け負う場合もあるのだ。
本作の主人公・蛭田敦士は、名の知れたプロフェッショナル。お客様をお客とも思わない傲岸不遜な態度で人間的には問題ありまくりだが、その腕前とピアノについての知識量は、文句のつけようがない。
オンボロピアノをオーバーホールして、魔法のように生き返らせるだけでなく、製造番号や部品などからピアノの来歴を解いていくプロセスにもワクワク!“ピアノ探偵”ストーリーとしても楽しめる趣も十分だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」