『てのひら怪談』
四宮しの 幻冬舎 \680
(2014年6月24日発売)
手のひらは、なにかと繋がろうとするもの。憎しみや優しさをつかもうとする人の心そのものだ。
この世ならざるものに心惹かれる日下と、危なっかしい彼のことが心配でたまらない平片。2人は友達以上で恋人未満。じゃれあってキスもするが、せいぜいそのぐらい。
日下と平方のまわりは、薄ぼんやりとしている。誰が生きている人で誰が幽霊なのか……。
やがて、そんなことはどうでもよくなる。生きていてもそうでなくても、大切な人に変わりないのだから。
平方は生死の境にいた日下を助けるのと引き換えにピアノを弾ける手(才能)を差し出した。が、つかんだ手のひらはつかまれた手のひら。救った自分も救われていたのだ。
怪談と言うけど怖くない。
ヒヤリとする背中に当てられた手のひらの温かさにほんのりするのです。
<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』(太田出版)『超ファミコン』(太田出版)など。