幸せそうに食事をほおばるキャラクターに、読むばお腹が空くこと間違いなしの『甘々と稲妻』。話題騒然の学校の先生×女子高生×幼児のお料理できない人々による、お料理マンガはどのようにして誕生したのか? 連載前の貴重な資料をご用意いただき、雨隠ギド先生を直撃した!
後編はコチラ!
【インタビュー】大切なのは「ギャップ萌え」と「カタルシス」! 『甘々と稲妻』雨隠ギド【後編】
『甘々と稲妻』は“料理ビギナー”だったからこそ描けた作品
——おいしそうなお料理を囲む、犬塚先生、つむぎ、小鳥の幸せな笑顔がたまらない……『甘々と稲妻』という作品はどのように生まれたのでしょう。
雨隠 連載用のネタを考えたのとき、まずシンプルに「好きなものを描きたい!」と思ったんです。そこで挙げてみたのが、先生、子ども、女子高生。
——スタートはそこからだったんですね。
雨隠 ふだんは描きたいシーンやセリフからストーリーを作っていくことが多いのですが、『甘々と稲妻』は完全にキャラが先なんです。担当さんとの打ち合わせでは、「先生×女子高生ものはサイコーですよね!」なんて、ひとしきり盛り上がったんですけど……さて、そこにどうやって子どもを入れるかというのが最初の問題で。この3人をつなぐテーマが必要になるわけです。「たとえば部活? 音楽?」と、担当さんがいろいろ案を出してくれたなかから選んだのが、「ごはん」というテーマ。やっぱり自分の好きなものです(笑)。
——意外にも、「ごはん」テーマはあとからだったんですね。
雨隠 キャラ設定は、かなり初期の段階で固まっていました。ビジュアルは試行錯誤しながら少しずつ変わっていきましたけど。初期の小鳥は、けっこう今とイメージ違いましたね。
——けっこうきれいめ、クールな感じが強く見えますが……あ、でも小鳥って黙ってればそういうキャラですね。料理が苦手で大食いな設定は初期から同じ!
雨隠 つむぎも最初からぼさぼさロングにしたかったんですが……ちょっと特徴が欲しいなと、思いきってボリュームある髪にしました。
——性格のイメージが固まるとともに、見た目も固まっていくのでしょうか。
雨隠 そうですね。『おかあさんといっしょ』の曲[注1]に、「ライオンになりたい女の子」というフレーズがあるんですが、つむぎはそのイメージです。女の子なんだけどワンパク。だけどボーイッシュではないんですよね。
——つむぎのボリューミーな髪、めちゃくちゃかわいいです!
雨隠 初期に比べて犬塚先生も、かなりパパっぽさが強くなりました。最初は女子高生と先生、という関係性を強く考えてたからこうだったのかな。
——しかし、お料理するマンガで……できないが2人がいっしょにがんばるという設定はとても新鮮に思えます。
雨隠 それは……料理ものにしようと決めたはいいけど、私、ほとんど料理しないほうなんですよ。そこで担当さんに「自炊してますか?」と聞いたら「しませんねえ、あんまり」って。「私もしないです」って(笑)。
——なんと、ここにも“できない同士の2人”が!?
雨隠 もちろんまるでできないってわけじゃないですけど……どっちかというとふだんは食べる役(笑)。友人にすごく料理のうまい子がいたりするので。
——でも、そういう先生の視点があったからこそ、『甘々と稲妻』が生まれたわけですね。小鳥か犬塚先生のどっちかが指導役になっても、物語は成立しそうですけど。
雨隠 たまには料理のできない人たちががんばる話があっても、いいんじゃないかな、できないからこそのおもしろさが描けるかな……と。
——たしかに。できない2人が危なっかしくもがんばってる姿に、「がんばって!」「おいしくできますように」と引きこまれて読んでしまう魅力があります!
- 注1 NHK Eテレ『おかあさんといっしょ』内で流れていた『あ・い・うー』のこと。「体操のお兄さん」こと佐藤弘道さんによる歌と体操に、当時のちびっ子は夢中だった。
- 注釈(リスト:中黒)