講談社漫画文庫『ジャイアント台風 -ジャイアント馬場物語-』第1巻
高森朝雄(作)辻なおき(画) \750+税
1月23日はジャイアント馬場の誕生日。
すでに没後15年以上が経過し、現役時代の彼を見たことがないという人も多くなっているとは思うが、それでもジャイアント馬場の存在は、今なお伝説的である。
その特徴的なルックスもあいまって、プロレスラーだけでなくタレントとしても人気を博し、モノマネでもおなじみだっただけに、彼をモデルとしたキャラクターまで含めると、マンガ作品への登場も数知れず。
しかし、やはり馬場の人気を押し上げたマンガとして、『ジャイアント台風』をピックアップしないわけにはいかないだろう。
原作は高森朝雄(梶原一騎の別名義)、作画は辻なおきという『タイガーマスク』と同じコンビ(しかも、ほぼ同時期に平行して連載されていたのだからおそろしい)による本作は、いわゆる「実録もの」と言われるジャンルで、プロ野球で挫折した後に力道山の門下生としてプロレスに入門し、アメリカでの武者修行を経てスターとなるまでを描いている。
しかし、梶原一騎作品の特徴ともいえる、事実を極度に誇張し、あるいはまったくの創作で描かれた部分が、とくに海外編において多々存在する。蓋を外したマンホールの上でブリッジ(その腹の上から力道山が全体重をかけ、もし落ちればふたりとも確実に死!)のような、無謀すぎる特訓や、あまりにも危険なデスマッチなどはその代表。
あれが事実だったのか……というファンの質問に対し、「あんなこと本当にやったら死んじゃうよ」と答えてしまったのは有名なエピソードだが、そうしたマンガ的誇張が馬場をスターダムに押し上げるのに一役買っていたのは間違いない。
現在のプロレスも、オカダ・カズチカや棚橋弘至をはじめとしたスター選手が存在し、その派手なパフォーマンスや華麗な技においては、確実に昭和のプロレスよりも進化を遂げている。だがマンガ界では、『ジャイアント台風』や『プロレススーパースター列伝』に相当する、「実録プロレスマンガ」の存在が欠けているのが残念でならない。
このジャンル、どうにか復活しないものでしょうかね?
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。