『ギガントマキア』
三浦建太郎 白泉社 \600+税
(2014年7月29日発売)
「あの」三浦建太郎が新しい作品を描いた!? とファンに衝撃を与えた『ギガントマキア』が、ついに発売となった。三浦建太郎といえば、濃密な画力と重厚なストーリーで絶大な人気を誇る『ベルセルク』の作者だ。1989年からつづく長編作品ながら、最近の休載に多くの読者がつづきを待ちわびている。
そんななか登場した新作『ギガントマキア』は、優しげな男「泥労守(デロス)」と、その頭に乗る不思議な少女「風炉芽(ブロメ)」の旅の物語。舞台は人類文明が滅びた遠い未来で、さまざまな生物が「さすが三浦マンガ!」とばかりに大きく、そして凶悪に進化している世界だ。
旅の途中、騎甲虫民族に捕縛された泥労守は、公開処刑の場で彼らの戦士、雄軍(オグン)と一対一の対決を強いられるはめに。雄軍は全身が硬い皮膚で被われた大男で、単なる人類の泥労守にハンデとして武器まで与えてくる。処刑するならそこまでフェアにしなくても……。
泥労守も武器は取らずにガチンコ勝負を希望し、男と男の激突が始まることに! その迫力は圧倒的な熱量を持つ描き込みからもビンビン伝わってくる。衝撃が1tもある拳で殴りかかる雄軍。対して泥労守は「この拳には民族すべての思いが乗っている」から避けるわけにはいかないと、すべての攻撃を受け止めてしまう。
そして激闘の末に「いにしえの格技」で相手を倒すことに成功する。もちろん泥労守は雄軍にドドメを刺さず、互いの間に尊敬の念が生まれるのだ。
じつはこのあたりから、ん?と気になるシーンが。泥労守の技はどう見てもサソリ固めやブレーンバスターのように見え、「いにしえの格技」の使い手は「列修羅(レスラ)」と呼ばれる……。
そう、今作はまさかのプロレスモノ! 凶器なしのフェアな戦い。相手の攻撃を全身で受け止め、さらに敵を倒す。まさしく王道のプロレスそのものだ。
さて、つかの間の平和は数ページで終わり、人族の帝国が攻めてくる。彼らは中世風の武装に、カタツムリが大型化した乗用の生物や火を噴くタコの化け物、テレパシー的な能力で操る「峰綸保主(オリンポス)より賜った」とされる巨人兵器で攻撃を開始した。
彼らが欲するのは、亜人族の聖地にある芽慰痾(ガイア)の肉片と呼ばれる巨人状の物質だ。その物質はすべての生を育み、それが失われると生命はその地で生息することができなくなるものらしい。一族玉砕を覚悟で突撃する騎甲虫民族を蹂躙する帝国の巨人。もちろんそれを見すごす泥労守のはずはない。