『KIMURA -木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか-』第1巻
増田俊也(作)原田久仁信(画) \600+税
12月22日は、両国国技館で開催されたプロレス日本ヘビー級王座決定戦で、木村政彦が力道山に敗れ、力道山が王座に就いた日。
それは1954(昭和29)年のこと……これを機に、史上最強の柔道家として名を馳せた木村は表舞台から姿を消し、一方の力道山は国民的スターに上りつめる。
「昭和の巌流島」といわれたこの一戦は、大きな謎を残すミステリーとしても語り継がれている。
じつはこの試合、引き分けの筋書きが用意されており、両者とも了解していたはずだったという。にもかかわらず試合途中、力道山はいきなり牙をむき、木村をマットに沈めたのだ。
木村政彦は全日本選手権を13年連続で制し、15年間不敗のまま引退した伝説的な柔道家である。突然の“八百長破り”によって誇りを傷つけられた木村は「力道山を殺す」と公言し、実際に短刀を持ち歩いていたという。
本作は、偉大な柔道家でありながらプロレスに転じて不遇を見た木村政彦の生涯を、18年におよぶ取材から書ききった、増田俊也のベストセラー・ノンフィクション『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』を原作とした、本格評伝マンガ。
原田久仁信といえば 80年代初頭に長期連載された『プロレススーパースター列伝』(原作:梶原一騎)で有名な作家。さらには梶原一騎の自伝的マンガ『男の星座』でもタッグを組んでいる。
『男の星座』の冒頭は、木村VS力道山の試合を16歳の梶原が国技館の2階席から眺めるシーンから始まっている。梶原の急逝により未完となった『男の星座』の遺志を継ぐという想いを確かめあい、『KIMURA』に挑む増田&原田の熱い情熱がほとばしる!
プロレスの知識がない人でも引きこまれること間違いなし、濃厚な人間ドラマを読む喜びがここにある。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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