『Ｓだけじゃたりない』
如月ひいろ 小学館 \429+税
（2015年2月10日発売）

“LOVE濃度ダントツ！おかげさまで業界No.1！”
そのあおりにいつわりなしの「プチコミック」の新星作家・如月ひいろが、連載絶好調の『溺れる吐息に甘いキス』第4巻と同時発売をはたした初短編集。
作者の前出作品最終回と新連載初回は、なんと「プチコミック」（2015年4月号）に異例の同時掲載というから、読者や編集部の作者に対する期待がいかに高いか、おおいに伝わってくるというもの。

さて、5つの短編が収録された本巻には、女子永遠の大好物「ずっと好きだった」が満載。
元カレ、友人、リゾートでのナンパ……どんな形であれ、かつて関わりを持ったオトコ（ただしイケメン限定）と偶然の再会→迫られまくり→困惑するもじつは一途で誠実なオトコだった……という棚ぼたストーリーが嫌いな女子なんて、いるはずなくってよ!?

しかも作者お得意のエロいキスも盛りだくさん▽ ※▽は白抜きはーと
作者が描く強引で息苦しいほど濃厚なキス、それだけでは決してとまらず、主人公の下着や胸や太ももチラ見えのラブシーンは、必ずやオトナ女子を恋したい衝動に駆り立てます!!

そしてそんな5作品の中でも、表題作「Ｓだけじゃたりない」は断然おもしろい！
読者はまず、巻頭を飾る「甘い秘密は暴かれる」で、主人公・瀬戸理衣子にグイグイ迫る元カレ・斎潤平の、ハンサムでやんちゃで強引で照れ屋で一途なキャラとセクシーっぷりに、クラッとくるはず。
同じく理衣子に言いよる、紳士な社内のキレ者で女子社員のあこがれの的である葉山さんも素敵だけど、ここじゃ単なるあてつけ役ね……。

と、思ったのに！　続く「Ｓだけじゃたりない」では「担当さんのおかげで葉山がとんでもない性格に」（作者談）というまさかの展開!!
そう、タイトルから推察できるとおり、紳士・葉山の素顔が見事なまでのS！　そしてそんな本性を見てしまった主人公・篠田彩は、「キミ、いい顔するね。楽しめそうだ」と葉山の標的に!!!!!
それからの彩は、（本人は複雑らしいが）我々読者には羨ましいイベントのオンパレード。
言葉はＳでも態度は紳士、結局イイ男な葉山の魅力が、読者全員のハートをさらってくってお話です!!

＜文・藤咲茂（東京03製作）＞
美酒佳肴、マンガ、ガンダム、日本国と陸海空自衛隊をこよなく愛し、なんとなくそれらをメシのタネにふらふらと生きる編集ライター。