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12月18日は東京駅の日 『地下鉄を降りて』を読もう! 【きょうのマンガ】

2014/12/18


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『諸星大二郎特選集第2集 子供の情景』
諸星大二郎 小学館 \1,429+税


大手町で地下鉄を降り、地下街でコーヒーを飲んで、大手町と通路で繋がった東京駅まで出て在来線に乗る。
そんなコースが日課になっている中年サラリーマンが、ふと普段とは反対の方向へ歩き出したことで、喜劇のような悲劇に巻きこまれてしまう。
巨大ターミナル駅でもある東京駅は、さながらリアルな迷路。そのうえ改装や増築が続いていて、地図や表示もあてにならない。いつもと違う道を行ったばっかりに、男は迷子となり、遭難してしまったのだ!

これは、諸星大二郎の短編『地下鉄を降りて』のあらまし。東京駅を舞台とした、不条理SFとも社会派のブラックコメディともとれる一作だ。

そんな東京駅が最初の形で作られたのが、1914(大正3)年の今日、12月18日。
当時は分断されていた新橋と上野をつなぐ駅として、1908(明治41)年から6年半かけて完成している。そこからさらに建て増しを続けて、現在の形となった東京駅。その構造の複雑さは増すばかりで、その過渡期の1976年に発表されたのが本作だ。

さて、中年サラリーマンはどうなってしまうのか。
彼は何時間も地下街をさまよい、さらに同じように1カ月(!)も地下街で迷い、世捨て人のようになってしまっている男とも出会う。
そんななかで中年サラリーマンは、出口がないはずはないと、疲れながらも憑かれたように、とにかく上へ上へ、階段という階段を昇っていく。その果てには……。

今も昔も東京駅を利用したことがある人なら、笑うに笑えないどころか、身につまされる作品だ。いや、東京駅だけじゃなく、新宿駅や池袋駅、各地の巨大な駅にも当てはまる内容である。
東京駅完成記念日に、ちょっと怖い駅の側面をのぞいてみては!?



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。

単行本情報

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