『新装版 栞と紙魚子』第1巻
諸星大二郎 朝日新聞出版 \1,000+税
(2014年11月7日発売)
『西遊妖猿伝』、『妖怪ハンター』などの代表作で知られる、伝記漫画家の諸星大二郎が、トボけた女子高生2人組を主人公に描く連作短編集の新装版第1巻。
新刊書店を営む家の娘・栞(しおり)と、古書店の娘・紙魚子(しみこ)の親友同士の2人が、とある街で様々な不可思議な事件に遭遇する。
一見普通の美少女だが、頭のネジが一本どころか何本も抜けていると言われる栞が持ちこむトラブルを、紙魚子が実家の不思議な古書店の蔵書から調達する本で解決しようとする……というスタンダードなストーリーに見せかけて、実際にはそうじゃない。
栞だけではなく、紙魚子のほうもやや常識ハズレの思考の持ち主だったり、紙魚子の家の本こそが問題の発端になったり、そもそもトラブルが全然解決しないままエピソードが終わったりと、この作品を読んでいて感じられる不可思議さは、もはや爽快と言っていいほど。
本作には、シリーズ第1作である「生首事件」の後日談が新たに収録されている。各巻にシリーズ新作読み切りが収録される予定だ。
また、『栞と紙魚子』シリーズの名物キャラである「クトルーちゃん一家」も登場し、終始異様な雰囲気を放っている。
クトゥルフ神話ネタが絶妙のさじ加減で投入されているので、そっち方面に興味のある読者もぜひチェックしてもらいたい。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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