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「幻想世界好き」にすすめるベスト5 【あの書店に聞く!! 書楽阿佐ヶ谷店】

2014/09/18


阿佐ヶ谷駅南口からすぐの場所にある書楽阿佐ヶ谷店には、20代~40代を中心に、幅広い年代の人々が訪れる。「週刊少年ジャンプ」で連載しているメジャーなマンガから、中央線に住む人々が好むサブカル作品まで幅広い品ぞろえと、幅を感じさせるマンガに触れられるような棚作りが魅力的だ。

今回は、普段『ONE PIECE』『進撃の巨人』のようなメジャー作品しか読む機会のない人たちに読んでほしい、今までの自分の世界観を変えてくれるようなマンガのなかから、話題の5作品を書楽阿佐ヶ谷店の石田充さんにうかがった。

直筆イラスト色紙があちこちに飾られている。

直筆イラスト色紙があちこちに飾られている。


書楽阿佐ヶ谷店オススメの5冊!!

『さくらの園』 ふみふみこ

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『さくらの園』第1巻
ふみふみこ 秋田書店 \600+税
(2014年9月8日発売)


男という存在を知らない、女の子だけの世界という設定のSFストーリー。個人的には今年のベスト1に置いてもいいくらいの作品です。
女性の作家さんだし、女性に向けて描かれているのかなと思ったのですが、男の自分でもすごく読みやすく感じました。

今までのふみ先生の作品は、性の問題が際立つような作品が多く、人によっては意見とっつきにくいかなと思うかもしれませんが、本作はつかみも上手く、それを感じさせません。いきなり「ちんこって知ってる?」って女の子が言ったり。この世界には、セックスいうものが存在しません。古い図書館で官能小説みたいなものがあって、それである女の子がちんこという存在を知るんですね。でも、彼女たちからすると全然なんのことかわからないんです。
途中である転校生がきて、少しずつ物語は動きはじめます。性欲のなかった女の子たちがキスをしたりして、性に目覚めていくのです。

まだ始まったばかりの作品なので、今後の展開が楽しみですね! 1巻の終わりで少し明らかになった、転校生の正体にも注目して読んでみてください。


『懲役339年』 伊勢ともか

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『懲役339年』
伊勢ともか 小学館 \552+税
(2014年8月18日発売)


WEBコミックサイト「裏サンデー」の読者投票で1位になり単行本化された作品。「裏サンデー」の読者を中心に、若い世代に人気があります。

経典によって転生が信じられている世界において、懲役339年を言い渡された大犯罪者・ハローの339年間のお話。この世界では、本当に339年間刑務所に入らなければならないんです。もちろんそんなに長く生きられないので、死んだら生まれ変わりを探して、その人間が穢れた魂を浄化するために罪を償います。

転生後のハローは、前世の記憶がないので、当然罪の意識もありません。しかしそれでも刑務所に入れられているんです。このSF設定が、テーマを際立たせているように思いますね。最初は「罪っていったいなんなの?」ということを、問いかけるマンガかと思ったら、後半になっていくと「善悪とは?」みたいな感じでどんどんテーマが広がっていきます。
デビュー作でいきなりこんなマンガを描けるなんて、伊勢ともか先生にはびっくりしました。『ジョジョの奇妙な冒険』みたいに、2代目、3代目と主人公が入れ替わっていくので、はたしてどう終わるのか、次にどんなテーマを持ってくるのか、楽しみにしています。

少年マンガではありますが、いろいろと考えさせられる作品なので、大人にもぜひ手に取ってほしいですね。
当店では大人も手に取りやすいように、「裏サンデー」の単行本は、本作を含めて青年向けの棚に置いています。


『RAPID COMMUTER UNDERGROUND』 座二郎

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『RAPID COMMUTER UNDERGROUND』
座二郎 小学館 \815+税
(2014年7月30日発売)


ツイッターを中心にネットで話題になっている本作、サラリーマン層に人気があります。サラリーマンである作者が、1日往復4時間の東西線の電車通勤のなかで描いたという異例の執筆方法に、まず驚かされます。
東西線は半分地下に入っていて、半分が地上に出ているんですが、このマンガは全部が地下世界のように描かれているんです。それもすごく幻想的に。自分の仕事場もすごくロマネスク風になっているんですよ! かっこつけているわけではないんですが、作者のセンスのよさを感じますね。

絵に魅せられるというか……感覚的にいいと感じました。水族館のお話があるんですが、水槽の絵が本当に幻想的なので、ぜひ注目してみてほしいです。地下鉄のなかから妄想して描いている意味というのが伝わってきます。
本作は、絵のすばらしさばかりに目がいってしまいがちですが、物語全体のラストの身につまされる感じも魅力です。

全ページカラーなので、紙からインクのいい匂いがして、電子書籍では味わえない、紙ならではのよさも存分に発揮しています。
ぜひこれを読みながら、東西線で当店までお越しください。


『魔犬 ラヴクラフト傑作集』 田辺剛

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『魔犬 ラヴクラフト傑作集』
田辺剛 KADOKAWA/エンターブレイン \640+税
(2014年8月25日発売)


コアなファンから熱い支持を得ている、「クトゥルフ神話」(※複数の作家によって作り上げられた架空の神話体系)を題材にしたマンガ作品。作者・田辺剛さんのファンや、原作小説のファンに人気があります。

まず目がいくのは、装丁です。すごくかっこいいですよね。
田辺さんは画力のある作家さんなので、表紙はもちろん、なかの絵もやっぱりすごい! 原作ファンも納得の画力だと思います。

この原作小説を書いているのは、クトゥルフ神話の産みの親である、ラヴクラフトという作家です。ラヴクラフトはクトゥルフ神話のなかで、簡単に言ってしまえば、「人間が人知を越えた巨大な何かに接したときに、どういった行動を起こすのか」といったことを書いています。
海外の古い小説なので、やはり情景を想像しにくい部分もあります。しかしこのマンガに描かれた絵を見たら、「原作を読んだときに自分が感じた恐怖はこれだったんだ!」と納得できました。

クトゥルフ神話は『這いよれ!ニャル子さん』の元ネタでもあるので、ニャル子さんを見てクトゥルフ神話に興味を持った方にもおすすめです。まずは本作を読んでみて、それからラヴクラフトの原作小説に挑戦してみてはいかかでしょうか。


『ラフナス』 白井弓子

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『ラフナス』第1巻
白井弓子 双葉社 \620+税
(2014年8月9日発売)


作者の白井弓子さんのファンや、SFマンガ好きに人気がある本作。
惑星ラフナスという星に暮らす人々は、反重力物質ラフナを体内に取り込んだため、宙に浮くことができるようになります。
しかし、なかには反重力に干渉されない「先祖返り」という人間がいて、この人間たちは宙に浮くことができません。ちなみに、本作の主人公もこの先祖返りという設定なんです。

先祖返りの主人公とは反対に、反重力に影響を受けすぎてしまう女性も存在します。あまりのその力の強さに、みんな彼女に近づけないんですが、主人公は反重力に干渉されないため近づけるんです!
それでも2人の心の距離はなかなか縮まらなくて……今後どう恋愛が発展するのかも楽しみですね。

作者の重力表現がすごく華麗で、SF好きにはたまらないと思います。こういった作品は、やっぱりマンガのように絵があるジャンルで描かれていると、世界観がわかりやすいですよね。映像化にも向いている作品だと思います。

まだまだ展開が読めない本作ですが、おもしろくなる要素はたっぷりなので、設定を生かしてどう話が進むのか楽しみにしています。



店舗情報:書楽阿佐ヶ谷店

〒166-0004

東京都杉並区阿佐ヶ谷南3-37-13 大同ビル1F

電話 :03-3393-5625

営業時間 :09:00~24:00(土曜祝日09:00~23:00)

定休日  :年中無休

URL:twilog.org/shogaku_comics

単行本情報

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