『時には薔薇の似合う少女のように』第1巻
中島史雄 集英社 \485+税
6月26日は露天風呂の日。「6・26」を「ろ・てん・ぶ・ろ」と読む語呂合わせから、岡山県の湯原温泉が制定したものだ。
今、もっとも有名な“お風呂マンガ”といえば『テルマエロマエ』(ヤマザキマリ)だが……ここで紹介するのは90年代の隠れた名作、『時には薔薇の似合う少女のように』だ。
舞台は中堅浴槽メーカー。主人公の温田泉理(おんだ・せんり)、通称「温泉くん」は名前のユニークさのみで採用された新入社員である。
そんな彼が、社内の美人姉妹との間で揺れる三角関係ラブコメは、お仕事柄ドッキリ入浴シーンがいっぱい! 姉のるりこはバリバリのキャリアウーマンで、温泉くんの直属の上司である。ふだんはととりつくしまもないほど気丈で感情を表に出さないが、ふと弱さを見せる瞬間が愛おしくてたまらない。
いっぽう、妹のリリコは明るく自由奔放。
気が強く、ものをハッキリ言うが、自分の気持ちに素直でかわいらしいのだ。顔はそっくりだが、性格は正反対の美人姉妹はどちらも魅力的。
さて、温泉くんが結ばれるのは!?
中島史雄はエロ劇画を経て、のちに今や伝説の「レモンピープル」などに執筆、ロリコンマンガブームの中心を担った作家である。
「ヤングジャンプ」に長期連載された本作はふんだんなお色気シーンのみならず、2人のヒロインの心の葛藤がしっかり描かれ、オトナの人間ドラマとしての読みごたえバツグンだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」