『プリニウス』第1巻
ヤマザキマリ/とり・みき 新潮社 \660+税
(2014年7月9日発売)
『テルマエ・ロマエ』で大きな支持を得たヤマザキマリと、『クルクルくりん』『遠くへいきたい』など多数の著書で知られるとり・みき。2人の漫画家を結びつけたのは、古代ローマだった。
雄大な自然、建造物、とり・みきによる圧倒的な臨場感を放つ背景が、ヤマザキマリの写実的で深みのある人物を引き立てる。考えてみれば、豪華すぎるタッグではないか。
主役は、ネロ帝時代に生きた博物学者プリニウス。プリニウスは、膨大な記述を誇る百科全書『博物誌』を著した人物。好奇心旺盛で、ヴェスヴィオ山の噴火を観察しすぎてガスで窒息死したという逸話も存在する。
今ではオカルトに分類されるようなことも含め、ありとあらゆる事象に興味を抱いたプリニウス。この人物にどう光を当て、どのような面を照らしていくのか。
同じく古代ローマを題材としていた『テルマエ・ロマエ』とは違って、ギャグやコメディ要素はいっさいない。プリニウスを通して、私たちは古代と現代、ローマ帝国と日本の共通項、相違点に気付くだろう。すべてのコマはローマに通ず
。<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でライトノベル評(ファンタジー)を連載中。
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