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『リリックメード』第1巻 斎藤岬 【日刊マンガガイド】

2014/12/12


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『リリックメード』第1巻
斎藤岬 幻冬舎 \630+税
(2014年11月21日発売)


飼い猫がヒトの言葉を突然しゃべりだすところから、物語は「再び」幕を開ける。
飼い主の名は百々花。アニメや特撮を好むオタクではあるが、ごく普通の女子高生……のはずだった。

猫は告げる。
百々花は子ども時代、悪の組織と戦う魔法少女チーム「リリックメード」の一員だった。だが小学校の卒業を迎えて魔法少女のお役も卒業。あとを次の代に任せて記憶の封印を受けたうえで日常に戻されたのだ。
百々花が属する第6期の元リリックメードたちは、悪の組織が求める「宝」を体内に宿している。いまそれを狙って組織が動き出した。用心しなければ……と。

ひとりずつ再会していく、顔も覚えていない昔の仲間たち。一方で、悪の組織はイケメン男子生徒を手先として送り込み、百々花たちを誘惑しようと画策。
味方も敵もはっきりしない手探りの状況下で、果たして無事に学校生活を送っていけるのか? そして百々花は昔のようにリリックメードへ変身できるようになるのか?
……と、先が気になるところで第1巻はおしまい。次巻、乞うご期待……となる。

ジャンル作品が成熟したあらわれとして、ベタな王道で育った世代が、お約束をひねった変化球を創作していくという現象がある。
たとえば近年なら、ファンタジーRPGベースで、勇者と魔王の「その後」を描いた作品がさかんになった。ほかならぬ魔法少女ジャンルも、変身戦闘ヒロインものと混じった変化球や、「その後」の物語自体がひとつのジャンルとなって久しい。

本作は、まさにそういう「その後」の物語を積極的に組み入れているのがポイントだ。
百々花はテレビを見ながら自分の年頃を考えて「魔法少女アニメも卒業かなー」とつぶやく。しかし、そう言う本人は同時に“いったん終わった魔法少女主人公のその後”でもあり、その世界観にいやおうなく引き戻されるのだ。
そこには、いったん完結を迎えてから何年も後に続編が作られる作品群と、それを懐かしみながらたしなむ私たち読者を照らし出すようなおもしろみがある。

そう、つまり、「ニチアサ」好きな、そこのあなた!
あなたも記憶を失っているだけで、元・プリキュアかもしれない! 来年のオールスターズ映画に、呼ばれるかもしれないんですよ!!



<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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