『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』第1巻
藤原ここあ スクウェア・エニックス \500+税
(2014年7月22日発売)
悪の王を筆頭にあらゆるものを侵略しあらゆるものを滅ぼす悪の組織。その権化の悪の参謀ミラが、魔法少女の深森白夜と出会う。
一目ボレだった。
「対立する敵同士」の許されない恋の行方を描いたマンガだ。
ああロミオ、あなたはどうしてロミオなの? ……そんな立場のしがらみに捕らわれた男女の恋は昔からの定番。ハードルが高いほど、それを乗り越えようとする2人の愛はアツく燃え上がる。
しかし、ミラと白夜が「2人きりで会う」ことはそんなに難しくない。地上を侵略する悪とそれを阻止する魔法少女だからタイマンで「対決」するのは当たり前。
敵に塩を送るということで、シフォンケーキをプレゼントしたり1年分のコメを送ったりもまぁアリ。「栄養はなんでも好きです」「もう1週間、水しか口にしていなくて」という魔法少女を倒すのは悪のプライドに関わるから。
ミラの悩みごとはその逆で、白夜を好きにするハードルが低すぎることにある。
最近のトレンド?にのっとって、白夜は「ボクと契約して魔法少女になってよ」的な御使いに目をつけられて魔法少女になった。バイトの数を減らすためにマグロ漁船、死体洗い、ホステスの3つから選べと持ちかけられ、高級クラブでお酒をついで笑う仕事をさせられる。
無制限のブラックカードで魔法少女を何とでもできるところを、必死にブレーキを踏み込む悪の参謀。「敵同士」という構図、ガラス越しのキスみたいなプラトニックを貫くお2人、お幸せにな!
魔法少女の討伐に手こずり(貢ぎまくることで)滞っている地上侵略に業を煮やした悪の王が、名門貴族の出のフォーマルハイトをミラの補佐につける。
そんなテコ入れもあり、白夜の手作り弁当を毒入りとウソついて「過酷な戦い」ということにするミラ……「秘め事プレイ」のテコ入れだ!
薄幸な魔法少女とのプラトニックラブ、ときどきスライムによる触手プレイという幕の内弁当みたいなマンガ。次巻以降も悪や御使サイドのジャマというスパイスが加わり、ますます食が進みそうだ。
<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。