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【日刊マンガガイド】『巴マミの平凡な日常』第2巻 あらたまい

2014/08/24


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『巴マミの平凡な日常』第2巻
Magica Quartet(案) あらたまい(画) 芳文社 \657+税
(2014年8月11日発売)


本作は、劇場版の大ヒットも記憶に新しいアニメーション作品『魔法少女まどか☆マギカ』を原作とするスピンアウト作品だ。
魔法少女として選ばれ、ソウルジェムという自分たちの魂を媒介にして戦う少女たちを描いた原作アニメは、多くの視聴者にトラウマを与えるような過酷な物語だった。
ところが本作での魔法少女たちはなぜかアラサー、メインキャラのほとんどは、すでに結婚している。魔法少女は歳をとることがない、本編では絶対にありえない設定になっている。

おそらくこのマンガを読んでよりたのしめるのは、『魔法少女まどか☆マギカ』ファンよりも、むしろアラサー女子おひとり生活ものが好きな層だろう。
原作についての知識は「ソウルジェムという魂を形に変えたものがある」「中学の時の魔法少女になった」この2つだけ覚えておけばいい。

本作の主人公・巴マミは派遣社員。部屋着は中学の時のジャージ。
自分のためにと奮発して買うのは、30代からのフェイスケア用の高級化粧液。
おいしい1個400円のドーナツより、チェーン店の100円ドーナツを買う。
ロマンチックにふたご座流星群を見に行った先で飲むのはカップ酒。
基本誰かと会うときは、おしゃれをして見栄をはり、大人の女の余裕感を出している反面の、ひとり暮らしの生活の崩れっぷりたるや。

この作品のうまさは、アラサーあるある漫画のおもしろみを引き立てるために、原作アニメの巴マミのキャラクターを曲解した点にある。原作の巴マミと本作の巴マミは、まったく別物だ。
作者は、アラサー女性の物寂しさやおひとり様生活の楽しさを表現する手段を探し求めているうちに、巴マミというキャラクターを見つけ、当てはめてしまったように思える。
スピンアウトであるがゆえに、少女の時はこうだったけど三十路になったら……というギャップを作ってしまえるのは、いい意味であざとい。

現在「独身アラサー女子キャラクター」は、読者の「萌え」対象のひとつとなってきており、おひとり様漫画は増え続けている。
なぜ独身女性キャラが魅力的なのか。その核になるものをこのマンガはがっちりつかんでいる。
ヒントになるのは「読者がこのマミさんを見た時にどう感じるか」。笑いか悲しみか。あるいは同情や庇護欲、抵抗感もあるだろう。
すべてひっくるめて、アラサー女子萌えという、一風変わった潮流が今存在していることを眺めることのできる作品になっている。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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