『天体戦士サンレッド』第19巻
くぼたまこと スクウェア・エニックス ¥533+税
(2014年7月25日発売)
悪(をした覚えがまったくないのだが)の組織・フロシャイム川崎支部と、正義の味方・サンレッドが繰り広げる、いつもの風景も、もう19巻目に突入。
ヴァンプ将軍はレッドに対決を挑んでは返り討ちにあい、河原で正座させられネチネチ説教。怪人たちはネコがいいの犬がいいの、インコは引くわーとペット談義をして、動物を飼ってない仲間をショップに誘ったり。
かといって、同じ時間がループする、いわゆる「サザエさん時空」でもない。「ヴァンプ様の料理をさんざん食ってきたレッドが、味の違いでコピーヴァンプを見破る」というぐらい、悪と正義は時間を積み重ねている。
アパート暮らしの怪人が、夜勤で昼間は寝ている隣人にびくびくするのも、もう読者は完全に受け入れ、すでに「あいつどうしてるかな」という感じ。
「怪人×日常的」というギャップ萌えはとっくにすぎて、実在してるとしか思えないキャラクターたちの描写は、今までにない域に達してる。これはもう、遠い親戚のビデオレターだ。
そういえば今回はペットの話多いな……と思ったら、巻末に悲しいお知らせが。
作者の現実も含めて、喜びも悲しみもずっとともにしたいマンガだ。
<文・多根清史>
「オトナアニメ」(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。