『同級生のマッチョ君』第1巻
小堀真 講談社 \429+税
(2014年7月17日発売)
そのインパクトから、ツイッターで1カ月に1万2千リツイート以上も拡散されたという本作、それだけに「出オチ!? 」なんて思ってしまう人もいるかもしれないが、それは違う!
本当に驚かされるのは、この強烈なタイトルと主人公のビジュアルは、あくまでフリのくすぐりで、中身はそれ以上に、マッスルでスペクタクルでリリカルだというところ!!
主人公・爆龍砕優(ばくりゅうさいまさる)は、自称「人より少しガタイがいい」高校1年の男子。
しかし、周囲からすればガタイがいいのではなく、すごすぎる! 暴力的らしいという噂とあいまって、周囲からは怖がられたり、避けられたり。
そんな彼に声をかけてくれるのは、じつは気弱な優と対照的に、かなり気が強いクラスメイト・辻園春子だけ。優と関わることで、春子は日々、優を狙う筋肉自慢たちの人質にされる。
普段は暴力が嫌いで、そのため過剰な暴力で反撃に出てしまう優だが、春子が人質となったときは男として、その腕力と包容力を自ら発揮! 「筋肉究極奥義 筋肉砕」を炸裂させる……。
うーん、名前負けしていない、この中身!!
しかし、作品自体は決してキワモノなギャグマンガではなく、ある意味で正統派。
笑いはもちろん、学園ものとしてのラブコメあり、バトルのなかに戦いの倫理と論理あり。
いや、じつはタイトルと主人公のビジュアルに反して正統派……ということ自体が、なにより最大の笑いになっている!?
ある年代にとっては、好きな子がいじめられたときに最大限の力を発揮する、細野不二彦『さすがの猿飛』や、最凶の見た目に反してじつは心優しい、八木教広『エンジェル伝説』を彷彿とさせるかもしれない。
一方、自分を受け入れられず、周囲になじめずにいる主人公が、まわりの理解と友人を得ながら、不器用にも一歩ずつ前に進んでいく姿は、この時代ならでは。
じつはツンデレなうえ、筋肉フェチという春子のキャラクターもかわいらしいが、繊細で健気な優にキュンと来てしまう読者も多いのでは?
笑うにしろ、惚れるにしろ、本作を読めば、あなたもマッチョ萌えになること必至だ。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Summer」が発売中。DVD&Blu-ray『一週間フレンズ。』ブックレットも手掛けています。