日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『レディ・ジャスティス』
『レディ・ジャスティス』第2巻
荻野ケン 集英社 ¥400+税
(2015年11月4日発売)
日本よ、これが少年ジャンプのERO MANGAだ! そんなまぶしいオビを付けたコミックス1巻の発売から数日後、ジャンプ本誌にて全16回で打ち切り。
凶悪な犯罪者どもがはびこる剛寒(ごうさむ)。正義の新聞記者に憧れる平凡な男子高校生の丸藤は、銀行強盗事件に巻きこまれる。
その時、強く気高く美しく、そしてエロいスーパーヒーローが舞い降りた……!
ジャンプでスーパーヒーローは激戦区だ。さらにエロも『To LOVEる―とらぶる―』というレジェンドが本誌を去ったあとも、『食戟のソーマ』が恐るべきポテンシャルを美味へのリアクション芸でのぞかせている。
あえて激戦区×激戦区に飛びこんだ本作は、長い目で育ってほしい希望の芽だった。剛寒市はバットマンのゴッサムシティ、丸藤の憧れる新聞記者はスーパーマンの仮の姿……などアメコミへの愛もあふれていたし。
ヒロインの剣崎天利は生まれながらに超パワーを持ち、地形さえ簡単に変えてしまう。全力を出したことは一度もなく、劇中では最大で0.4パーセント。神のごとく無敵だ。
ヒーローには弱点がつきもの。天利のそれは「恥じらい」だ。中味の強さに、コスチュームの強度が付いてこない。攻撃で服がボロボロ、恥ずかしくて動けなーい!
そんなわけで天利VS悪党は「いかに服を脱がすか」にフォーカス。うっかり銃撃を受けたら服が破れ、恥ずかしがってるのを「効いた」と勘違いした敵がさらにひん剥く。
そこに丸藤が「剣崎さん、新しいコスチュームよ!」と服を渡して一件落着。16回、ほぼこればっかり。
マンネリ上等、ヒーローマンガに羞恥プレイを盛り合わせるのはとてもマーベラス。
パンツを猫に盗まれてノーパンで出撃、スカートがめくれるとヤバイからと下を守っていたら上が大ピンチ! もう最高でしょう。
服の破片をたどってきた丸藤(相当な変態です)が渡した露出度の高いコスチュームも、服があるだけありがたいと喜んで装着。前はあれだけ恥ずかしがってたのに、調教されてやがる…!
こうして少年誌の枠では頂点を極めてしまったERO MANGAは、打ち切りという名で別世界に旅だった。
もっとヴィラン(悪党)側に脱衣レギュラーを配置すれば続けられたかもしれないが、ひとまずベストは尽くした。
レディ・ジャスティの活躍の続きを、「ジャンプSQ. 」などで観たいファンのひとりがここにいるぞー! と、声を大にして言いたい。
<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。