「あの話題になっているアニメの原作を僕達はじつは知らない。」略して「あのアニ」。
アニメ、映画、ときには舞台、ミュージカル、展覧会……などなど、マンガだけでなく、様々なエンタメ作品を取り上げていく「このマンガがすごい!WEB」の人気企画!
そう、これは「アニメを見ていると原作のマンガも読みたいような気もしてくるけれど、実際は手に取っていないアナタ」に贈る優しめのマンガガイドです。「このマンガがすごい!」ならではの視点で作品をレビュー! そしてもちろん、原作マンガやあわせて読みたいおすすめマンガ作品を紹介します!
今回紹介するのは、TVアニメ『ドリフターズ』
うぉー! 動く平野耕太作品が再び観られるとは!!
国内外に忠誠を誓うコアなファンが多い平野耕太マンガがアニメ化されると聞いて、歓喜の声をあげた人は多いはず。前作『HELLSING』で、いかに作者の魅力を全開でアニメ化することが容易ではないかを知ったファンなら、なおさらだろう。
満を持しての放映開始日、テレビの前でドキドキしながら初回を拝見! そして興奮と安堵が同時に体を突き抜け、脱力しましたよ、ホント。
静かな森を駆け抜ける武士の一団、森を抜けた先には合戦の雄叫びが満ちていた……!
関ヶ原の合戦で幕を開ける『ドリフターズ』は、古今東西の歴史人たちが異世界に召喚され、二手の勢力に別れて戦うバトル・ファンタジー。主人公のひとり、島津豊久は西軍で戦った島津隊を、孤立した戦場から撤退させるべく進言した男。
自らはしんがりとなり討ち死、戦場に散った……はずだった!
しかし、豊久が行きついた先は地獄ではない。エルフやドラゴン、人間が治める帝国が混在する異世界だった。そこで出会ったのは、あろうことか、すでにこの世にいないはずの織田右府信長、そして源平の時代を生きた那須資隆与一!? 彼らは、戦いしか知らない純正キリングマシーン・豊久を頭に据えて、国盗りを開始する!
舞台は最大版図を持つ人間至上主義のオルテ帝国が、エルフら亜人を奴隷化している恐怖に支配された世界。しかし、近年現れた黒王率いる亜人で構成された軍団が人間・亜人を滅ぼすべく帝国へ迫っていた。それを防ぐべく活動する十月機関は、豊久ら異世界からの人間たちの力を借りて国王の野望を打ち砕こうとしていた。
だが、異世界から送りこまれている彼らはふたつに分類されている。ひとつは豊久たちと同じ、ハンニバルやスピキオ、ワイルドバンチ強盗団、そして菅野直大尉など、“ドリフターズ”と呼ばれる「漂流者」たち。もう一方は、土方歳三やジャンヌ・ダルク、アナスタシアなど、“エンズ”と呼ばれる「廃棄物」たちである。
「漂流者」は、彼らの時代の知識や武器を駆使するモノたちだ。好き勝手に生きようとするが、人間であることに変わりはない。しかし、「廃棄物」に分類されたものは、どうやら強烈な恨みを残してこの世を去ったようで、人間の形こそ維持しているが、精神は破壊され、魔法のような力を操るなど、人間離れした存在と化している。彼らは黒王のもとに集い、人間の滅亡を願う。
「漂流者」である信長やスピキオたちの歴史を超えた戦略論に加え、火縄銃戦術やガトリング銃、はては海軍局地戦闘機・紫電改が火を噴く! 一方、「廃棄物」たちの人間離れした剣術や火炎系攻撃、氷系攻撃は死を量産!!そしてそれらに翻弄される既存勢力たち!!!!
これらがアニメとなってヌルヌルと動くのだ。戦略・戦術・超兵器……これでワクワクしないほうが、どうかしてるぜ! 原作の力強い画風もそのまま! 一度聞いたら忘れない強烈な台詞もそのまま!! そして、シリアスパートとは雲泥のノリのギャグパートまで、そのまま忠実に再現されている!!!! そのうえ現地人が使う「オルテ語」のセリフが主音声で流れ、副音声に日本語で流されているこだわりぶりときたら感涙もの!!!!!!
ちなみに、最初に流れたCMが鹿児島の尚古集成館だったことに驚愕したのも、決して私だけではないだろう…… 今後、だれがどのような形で参戦するかも不明、どのような結末を迎えるかも推測不可能。毎週、一寸先は闇のなんでもありの超絶展開が続くのだから、しばらくワクワクの絶えない日々が続きそうだ。
見れば必ず感じてくれるはずだ、「私はドリフターズが大好きだ。」と。
TVアニメ『ドリフターズ』を観たあとに……
今回、TVアニメ『ドリフターズ』をさらに楽しみたいアナタに、読んでほしい作品を紹介しちゃいますよっ。
『ドリフターズ』平野耕太
『ドリフターズ』第1巻
平野耕太 少年画報社 ¥555+税
(2010年7月7日発売)
原作の平野耕太『ドリフターズ』は、2016年11月現在5巻まで発売している。ストーリーが先行している分、登場するキャラクターたちも大きく増え、そして勢力も複雑化しつつある。そして、何よりも(!?)原作マンガの読みどころは巻末と、カバーを外した先にある! まるで同じく平野耕太『以下略』ばりの吹っ切ったギャグがてんこ盛りだ。この作者の脳を直接食べているかのような極上の「悪のり」に一度ハマれば、もう後戻りはできないだろう。
原作『ドリフターズ』以外に、このマンガもおすすめ!
『続 戦国自衛隊』(画)田辺節雄(原案)半村良
『続 戦国自衛隊(セブンアリババ文庫 )』第1巻
(画)田辺節雄(原案)半村良 世界文化社 ¥552+税
(2008年3月10日発売)
実在の人物がファンジー世界で大暴れするのが『ドリフターズ』なら、実在の軍隊が実在した過去世界で大暴れするのが『戦国自衛隊』シリーズだろう。なかでも田辺版とも言われるシリーズのうち『続 戦国自衛隊』では、関ヶ原の合戦に西軍側として参戦する自衛隊が描かれている。チート級の武力で東軍を圧倒すると思いきや、東軍側にも謎の勢力が味方についていた! こちらの島津家撤退戦では、しっかり自衛隊が頑張っているぞ!
<文・東京03製作 沼田理>
マンガにアニメ、ゲームやミリタリー系などサブカルネタを中心に、趣味と実益を兼ねた業務を行う編集ライター。