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『オトメの帝国』 第10巻 岸虎次郎 【日刊マンガガイド】

2016/08/14


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『オトメの帝国』


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『オトメの帝国』 第10巻
岸虎次郎 集英社 ¥562+税
(2016年7月19日発売)


集英社のWEBマンガサイト「グランドジャンプWEB」連載中の『オトメの帝国』第10巻が7月下旬に発売、単行本がついに2ケタ台へ突入した。

とある女子高校を舞台に、女の子同士のカップルが何組も立ち代わり、日常生活のさまざまなシーンでふと寄り添いあう姿を描き続けてきた本作。
通学路、教室、部室、保健室、家のなか……舞台はどこにでもある場所で、起こる出来事も決して大きな事件ではない。ちょっとした触れあいのなか、女の子たちが自分の気持ちを言葉や行動であらわす図を1エピソード10ページ前後の短い尺でさらりと描くオムニバス的構成になっている。
だが、ありふれた様相でありながら、どのエピソードにも崇高とさえいえる美しい一瞬が存在するのが見どころだ。

たとえば、第127回「三脚のアレと夕陽」を読んでみよう。
積極的な女の子と奥手な女の子が下校中、土地の測量をしている作業員を見つけて測量器をのぞかせてもらうお話だ。
本当にただそれだけなのだが、見たことのない世界を体験するよろこびや、そうした体験へ飛びこむ勇気をもつ人への憧れといった深い情緒が2人の会話とモノローグを通して浮かび上がり、たいへんにドラマチックでもある。

これはひとえに作者・岸虎次郎による端正ででととのったビジュアルの効果だろう。
表情や仕草のひとつひとつが丁寧にニュアンスをこめて描かれ、少女たちが今そこにしかない特別な時間と空間を生きているという説得力を読者へさしこんでくるのだ。

さて、そんな本作に登場する女の子同士の緊密な関係は、なんと呼ぶべきか。
いわゆる百合か、はたまたガールズラブか、あるいはあくまで友情か?
いや、そんなカテゴライズはあくまで我々の理解のための計りであって、劇中の少女たちに問うのは野暮だろう。
女の子同士だからって”禁断の恋”みたいな気負いがないのが本作最大の美点で、ここまで長く連載が続いている秘訣のように思える。

たわむれにお役所で婚姻届をもらってきてお互いの名前を書く女子高生カップル集団のナチュラルなはしゃぎっぷりを読めるマンガって、いやー、最高ですね。
もう、この子らが結婚できないならそんな世の中のほうがおかしいというか。ねえ?



<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。「プリキュア」はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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