『岸虎次郎作品集 冗談だよ、バカだな』
岸虎次郎 太田出版 \680+税
（2014年12月13日発売）

あられもない姿で、いたいけな小学生男子に扇情的に迫る女の子。童貞と噂されるカタブツそうな教師に、毎日のようにラブレターを送り続ける女子高生。「屋外で立ったままおしっこすること」を文学的側面から（!?）語り合う2人の女子高生。
独創的なシチュエーション、数々のエロティックな画面にドキリとさせられる粒ぞろいの短編集。

表題作は、男子高校生たちの物語。
女子に間違われるルックスを持つアサを、トモは同級生たちといっしょになってからかっていたが、体操着のすきまからチラッと見えた彼の局部を目にした日から、思いがけない感情が芽生えてしまう。「勃起したほうが負け」というお遊びで、混んだ電車内でお互いに触り合う……それはあくまで“冗談”のはずだったが!?

とはいえ、この作品はBLではない。
そもそも本書に収められた作品は、すべて万人向けの「エロス」が主役の物語といえるのでは。

禁断の扉を開くきっかけは日常のなかに潜んでいる。
男性にも女性にも味わってほしい、趣深い作品集だ。

＜文・粟生こずえ＞
雑食系編集者＆ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」