幅広い世代に愛され続け、惜しまれながらフィナーレを迎えた『小さな恋のものがたり』。本当にチッチとサリーの恋物語はこれで終わってしまうのか!?
完結に込めたみつはし先生の思い、そしてなにより気になる続編への可能性について直撃した(がんばったけど、ちょっとラストのネタばれありです。ゴメンナサイ!)。
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チッチとサリーは「永遠の片思い」
――チッチとサリーの関係についてお聞きします。マンガのなかではチッチが「彼氏よ」と言ったりするんですが、先生のエッセイでは「永遠の片思い」と書かれています。実際、2人は両思いではないまま……ということでよいのでしょうか。
みつはし そうなんです。片思いがどんどん進行してしまって、だんだん本当に恋人のようなセリフや態度を取るようになっていくんですよね。自分でも読み返してビックリです。チッチは片思いのままずっとサリーを追い続けていて、いつしか片思い同士になる。私は片思い同士の恋が好きで、チッチとサリーは永遠の片思い同士なのです。
――チッチとサリーの2人のやりとりについて、好きなシーンというかお気に入りのものはありますか? エピソードが多数あると思うので、「○○な状況」みたいなものでもかまいません。
みつはし おもしろくて楽しくてちょっと泣けてしまうシーンが好きなんですが、いろいろ思い出すと笑っちゃいますね。サリーがチッチの家庭教師になって数学を教えるところや、チャーミングなマユミの足と、自分の音符のような足を比べるときなんかもいいですし、チッチがなかなか来ないサリーを待ってむくれているところ、チッチが演劇部に入ってドタバタしているところ。あとは、仲のよい仲間たちとハイキングに行ったシーンも好きですね。
――作品のなかには、先生ご自身の片思いのエピソードをモデルにしたものもあるのでしょうか?
みつはし チッチがサリーとデートの時、初めてナイフとフォークを使ってエビフライを食べるところです。エビフライを床に落としてしまって、真っ赤になるチッチに、サリーが「イキのいいエビだね」と言ってくれたシーンです。
――浮気もないし、なにか大事件もない。日常のなにげないエピソードを考えるのはたいへんだと思うのですが、どのようにネタを考えていらしたのでしょうか?
みつはし 日常のありふれた人たちの言動をおもしろいと思って見ていると、実際におもしろいんですよ。それらをネタに、アイデアを膨らませていくんです。ネタは真夜中、白いクロッキーノートをじーっと見つめていると、じわっと取っかかりが出てきて、それからは一気にいもづる式にアイデアが出てきますね。
――参考になさった映画やドラマ、マンガや小説はありますか?
みつはし 『サザエさん』ですね。日常はおもしろいということを、マンガで大笑いしながら教えてもらっていた。あと、映画『エデンの東』【※注1】[注1]では恋する抒情性を、『イタリア式離婚狂想曲』【※注2】[注2]で日常の笑いを、小説『ジャン・クリストフ』【※注3】[注3]『ジェーン・エア』【※注4】[注4]で人生の感動を学びました。
- 注1 『エデンの東』 1955年に公開されたアメリカ映画。主演は本作がデビュー作ながら出世作となったジェームズ・ディーン。旧約聖書のカインとアベルの物語をベースにした同名小説の後半部分を脚色した青春ドラマの傑作。J・ディーン演じる孤独ながら家族の愛を求める悩める青年像は強烈な印象を残した。
- 注2 『イタリア式離婚騒動記』 1961年に製作されたイタリアのコメディ映画(日本公開は1963年)。1961年のアカデミー賞で脚本賞を受賞。法律で離婚が認められていなかった時代のイタリアが舞台で、妻と離婚し年下のいとこと再婚したい男の企みを風刺たっぷりに描く。
- 注3 『ジャン・クリストフ』 1903年から1912年にかけて発表されたフランス人作家ロマン・ロランによる長編小説。ベートーヴェンをモデルにしたともいわれる主人公の音楽家ジャン・フリストフの生涯を描く。本作によってロランはノーベル文学賞を受賞した。
- 注4 『ジェイン・エア』 1847年に刊行されたイギリスの小説家シャーロット・ブロンテによる長編小説。主人公の孤児ジェーンの反骨精神や自由恋愛を経ての結婚は当時の読者に大きな衝撃を与えた。何度も映画化され、ブロードウェイでミュージカル化もされている。