このマンガがすごい!WEB

一覧へ戻る

『ぷくゆり』 マウンテンプクイチ 【日刊マンガガイド】

2016/05/14


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ぷくゆり』


pukuyuri_s

『ぷくゆり』
マウンテンプクイチ 一迅社 \852+税
(2016年4月18日発売)


クラスでいじめにあって、だれも友だちがいない少女・歩(あゆみ)。
彼女を助けたことで、孤立するようになった少女・紗希(さき)。
修学旅行の日、2人はみんなと逆方向の列車の切符を買った。

収録されている「ふたりだけ」という短編の登場人物。
2人はクラスのみんなから、いじめられてどんどん離されていくように見える。
実際には違う。2人は意図的に離れていくのだ。タイトルのとおり、2人だけになりたいと願う。

周囲の人間たちは、彼女たちを完全に受け入れないわけではない。いじめや仲間はずれに対して、謝ろうとする人物も出てくる。
わかっていても、2人きりになることを望む。ほかの人間とのつながりは希薄だったが、紗希とあゆみは心の底から受け入れあえたからだ。
その気持ちこそが「好き」という思い。

短編「ぷくゆり」では、しゃべるのが苦手な少女・穂波と、中学生時代問題児だった少女・朝倉が登場する。
穂波は朝倉にピアスの穴を開けてほしいと願い出る。穂波の耳たぶに穴を開けるシーンは、あまりにもエロティック。
その後、穂波は朝倉から離れるように先生やクラスメイトから言われても、朝倉といっしょにいたいと感じ始める。

登場人物たちの「好き」は「孤独」と常にともにある。
孤独だったから、受け入れてくれたあなたのことが好きになる。
あなたが好きだったからこそ、孤独になることも辞さない。
どっちが先なのかはわからない。

哀しみに顔を伏せていた少女たちは、急に明るくなって笑顔で顔をあげるわけではない。
ただ、2人が寄り添って、伏せた顔のまま笑顔になっていく様は、官能的だ。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

  • 『ぷくゆり』 Amazonで購入
  • 『ななゆり』 Amazonで購入
  • 『あまゆる。』第1巻 Amazonで購入

関連するオススメ記事!

アクセスランキング

3月の「このマンガがすごい!」WEBランキング