『Girl@Girl』
まに 一迅社 \852+税
(2014年8月4日発売)
いわゆる百合もの・GL(ガールズラブ)ものを集めたオムニバス作品集。
出てくるキャラクターはだいたいが中学生前後の女の子たちで、彼女たちの友だち以上恋人未満な関係を描いている……かのように思える。
しかし、この作者が描く関係は少し独特だ。
たとえば「恋にXXは関係ないよね!」という短編に登場するのは女子中学生と幼稚園児だ。
出会った当初は喧嘩ばかりだったが、幼稚園児の少女の孤独に中学生側が心揺さぶられ、2人がいかにお互いが好きか描きあげる。
ふわふわした柔らかな線で描かれる少女たちの「好き」の気持ちは、子どもが仲よしな相手に抱く感情にかぎりなく近いものとして表現されている。
それが恋愛かどうかは、すべて読者に委ねられている。少なくとも数多くのGL作品に比べて、本作では「好き」は相当に曖昧な感情として描かれている。
だからこそ、女の子同士のほんわかした会話があふれる空間を純粋に楽しめる作品に仕上がっているのだ。
「恋愛とはなんぞや」という難題を忘れさせてくれる。女の子たちが笑顔でいてくれるならそれでいいではないか。
作者は「コミック百合姫」主催の新人賞・百合姫コミック大賞の受賞者。女の子だけの空間の心地よさをしっかりとらえ、悩まず楽しめる優しい「好き」の世界をつくりあげる手腕の持ち主だ。
「百合」「GL」の裾野の広がりを感じさせる1冊。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」