『THE IDOLM@STER』第3巻
高橋龍也(脚) まな(画) 一迅社 \574+税
(2014年8月4日発売)
コミカライズは本当に難しい。
原作どおりなぞっていくか、原作のアナザーストーリーをやるか。オリジナル要素をどこまで入れたらファンは納得するのか。ファンのお眼鏡に叶う作品を作れるかどうかは腕の見せどころだ。
コミカライズ作品としてファンに非常に高い評価を受けているのが、このマンガだ。 『TEH IDOLM@STER』は、もともとはアイドル育成ゲーム。アーケード版登場からもう10年近く人気が続いており、コアなファンも多い。コミカライズもすでに多数刊行されているなか、本作は「TVアニメ版のコミカライズ」という体裁で描かれている。
高く評価されているのには3つ理由がある。 ひとつ目は、既存のキャラクターのエピソードを活かしながら、その新たな一面を描いていること。アニメ・ゲームとメディアミックスをくり返すうちに複雑化した内容を整理しなおし、キャラひとりひとりの繊細な心をきっちり表現することに力を注いでいる。著者の解釈だけでなく、多くのファンが原作ゲームやアニメに対して持つイメージの最大公約数的なキャラクター像を汲み上げているため、読みやすい。
2つ目はアニメ版とのリンクのバランスが取れていること。アニメ版を知っている読者にはおなじみの数々の名場面のサイドストーリーを、完全オリジナルで描いている。作中で起きる事件も、後の彼女たちを知っている読者は「こういうことがあったから成長したんだ」と保護者的な立ち位置から見守ることができる。アニメのオリジナルキャラクターにもフォローが入っているのも好感が持てる。
3つ目は『THE IDOLM@STER』というコンテンツを知る導入になっていること。基本的にはゲーム・アニメを知っている人向けの作品。しかし1話ずつキャラ単体に絞り、各々の魅力を丁寧に描いているので、初めて触れるには持ってこい。かつ、作品全体のネタバレがほぼないのは見事。
コミカライズというマンガの一ジャンルに、ひとつの可能性を作る作品。 ゲームやアニメをマンガ化することで生まれる新しいなにかの、ひとつのテストケースとしてぜひ読んでほしい作品だ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」