『ソラミちゃんの唄』第2巻
ノッツ 芳文社 ¥819+税
(2014年7月26日発売)
引きこもり、コミュ障、浪人受験生。そんなヒロイン、ソラミの趣味「宅録」を描いた作品。
宅録とは、家でひとりで楽器を弾き、歌を歌い、パソコンを使ってミックスしていく、音楽作成法。近年ではニコニコ動画などの動画投稿サイトで、多くの宅録ミュージシャンたちが脚光を浴びるようになった。
ソラミが引きこもっている裏には、亡き父への心の傷があるのが見えてくる。
宅録とともに、どこまで心の傷に面と向かって立ち向かえるのか、前に向けるかの物語だ。
彼女が卒業しなければいけなかったのは、亡き父親と自分が宅録を続けていた「部屋」そのもの。
ラスト近くで、機材だらけだった部屋が、がらんどうになる絵が入る。床に置かれていたであろう機材の跡が印象的。
人見知りは、そう簡単に治るものではない。それでもようやく父親に「行ってきます」と言える、力強さがこめられたシーンだ。
「今さらになって自分の曲を皆さんのために唄えません。だからいつものように自分のために作った曲を自分のために唄います」
「だけど私は音楽の不思議な力を信じます」
1巻クライマックスのセリフが、2巻で本当の意味で彼女を変えていく。「歌う」ではなく「唄う」と徹底しているのも、ちゃんと彼女なりの意味がある。
あまりにも人が苦手で外に出られないソラミに、友人たちがツッコミを入れていく、テンポのいい日常シーンも楽しい。
音楽マンガとしても、家族愛・友情ものとしても、非常によくまとまっている良作。
なにか次の一歩を踏み出す勇気が出ない時、読んでほしい。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」