『おべんとうと加瀬さん。』
高嶋ひろみ 新書館 ¥850+税
(2014年7月30日発売)
『あさがおと加瀬さん。』の続編にあたる本作。はれて「つきあう」ことになってキスもした2人の、その後が描かれていく。
美人な陸上部のエースの加瀬さんこと加瀬友香と、緑化委員で花を育てるのが好きな山田結衣は、高3への進級とともに晴れて同じクラスになり、さらに距離が近づいていくのだが……。
学校中の人気者と、あまり目立たない子の取りあわせは、恋愛マンガでは外せないパターン(女の子同士であることを除けば、だけど)。
たとえば山田が、加瀬さんのためにお弁当を作っても、加瀬さんが部活の用事で忙しすぎて申し出られなかったり、加瀬さんがドロップをくれるちょっとした仕草に、山田がほかの女の子の影を見てしまったりと、モテるタイプと付き合うがゆえの苦悩も多い。加瀬さんが一見男の子っぽくサバサバして見えるため、あっさり別れられてしまうかも……という不安が山田には尽きない。
しかし、加瀬さんのほうも、山田に離れられる不安を抱えていたことが、とくに修学旅行中のお風呂エピソードを描いた「砂浜と加瀬さん。」でクローズアップされる。
ほかにも、加瀬さんが山田に負けず乙女チックな行動をとり、かわいらしく照れた表情を見せる場面も多々ある。スポーティな雰囲気に反して胸が立派なのも含め、これは山田でなくても加瀬さんへのギャップ萌えが止まらない!
自分の気持ちを素直にあらわす山田が、どうしたら加瀬さんがいっぱい喜んでくれるのか?と一生懸命考えて行動する姿もいじらしい。
男子のかわりとしてではなく、女の子同士だからこそできる恋やドキドキ感がとても初々しく、キュートな絵柄で描かれているのが、このシリーズの大きな魅力だ。
残念ながら、掲載誌のアンソロジー誌「ひらり、」は、7月発売号をもって休刊、との報が入ってきた。しかし、『太陽と加瀬さん。』としての連載分を含む、第3巻も刊行される予定とのこと。
読むと幸せに包まれる、この2人のラブストーリーが今後できるだけたくさん読めることを、心から願いたい。
<文・和智永 妙>
ライターたまに編集。『このマンガがすごい!』以外に、「マンガナビ」公認ナビゲーター、ほかアニメ記事など書いています。