『あやめ14』第1巻
天野しゅにんた 一迅社 \600+税
(2014年12月10日発売)
百合シーンではちょっと大人びた文学的作風で人気の作家・天野しゅにんたの最新刊。
見た目はおとなしくて清純だが、じつは人一倍性欲と妄想が強いあやめと、その友人である珊瑚、カガリ、忍が繰り広げる、友情と恋(!?)とエロな妄想うずまく青春物語だ。
なにはさておき、まず、主人公のあやめのキャラが最高。
ソーセージを見ても、電動歯ブラシを見ても、エキストラバージンオリーブオイルを見ても妄想&発情。友達と公園のスプリング遊具に跨がって、キコキコおしゃべりしつつも赤面。夜ベッドで「あのパンダさんのまたがりごこち、新しい感じだったなあ……」と反すうオナニー――って発情マシーンっぷりに、男子中学生かよ!とツッコミつつ、中2って男子も女子も似たようなもんなんだなあ……と、目からウロコ。
女子(しかも処女)の性欲って、まだまだ取り扱いがビミョーで、ともすればドロドロになりがちだが、ここまでスカッと明るくモロに描かれると、むしろ爽やかというか。
あー、自分にもこんな時があったっけ……と、ほほえましくなったり。
あやめの友人も、それぞれキャラは違えど、みなそろって好奇心ざかりで。
宿題を忘れた罰に町内ゴミ拾いをしていたはずが、エロ本を発見してキャーキャー騒いだり、神社の裏でエッチしてるカップルを覗き見してドキドキしたり。
アホエロくも健全な思春期絵図に、ほっこり癒される。
なかでも、あやめ同様、毎晩モヤモヤしながらも、それがなんなのかまだ気付いてなくて、悶絶しながら必死で腹筋に励むカガリ、かわいすぎるっ!
生粋の百合ファンはもちろん、百合の楽しみ方がいまいちわからんという人も、思わずキュンと萌えちゃうこと間違いナシ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69