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『アイとアオの境界』 第1巻 天堂きりん 【日刊マンガガイド】

2016/09/23


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『アイとアオの境界』


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『アイとアオの境界』 第1巻
天堂きりん 幻冬舎 ¥630+税
(2016年8月24日発売)


『きみが心に棲みついた』で知られる天堂きりんの最新作は、東大阪の瓢箪山(ひょうたんやま)界隈を舞台にした、29歳の藍子と19歳の蒼の物語だ。

書店員として働きながら、祖母が残した古い一軒家に独りで住んでいる藍子。
そんなある日、両親が従弟の蒼を連れてやってきた。
神奈川から関西の大学に進学した蒼だったが、現在住んでいるマンションが取り壊されることになり、藍子の家に下宿させてほしいという。

親戚とはいえ、若い男子と2人暮らしなんて、とんでもない!……と慌てる藍子だったが、最終的には押しきられる形で同居するハメに。気楽なアラサー独り暮らしから、無愛想な年下の従弟に気を使いながらの、ドタバタな日々がスタートする。

こんなふうに、ざっくりとストーリーを紹介すると、「またぞろよくある同居ラブコメね……」と勘違いされてしまうかもしれないが、そこは人間ドラマの達人・天堂きりん。
29歳にして大阪のオバチャン風情を醸す藍子も、猫背で無口で近寄りがたいオーラを発する蒼も、重い荷物を背負って生きていることが、少しずつ明らかになる。

30歳を目前に控えて多方面から結婚へのプレッシャーをかけられているというヒロイン設定も、紋切型に描かないのが天堂のすごいところ。
職場にはアラフォーの先輩とハタチのバイトがおり(両者とも女性)、3世代のグラデーションでゴリゴリと削られるような女子特有の精神戦を描き、さらに出産間近の双子の妹・華子という存在を立てることで、逃げ道をふさいでいく。

無神経な言葉が飛びかうなかで、気持ちをすりへらしてく藍子。
緊張と緩和が交錯する、ピリリとした会話劇を描かせたら、天堂の右に出るものはいない。

次巻以降は蒼視点の物語も展開されていく。
記憶の糸をたぐりよせながら、不器用な2人が少しずつ距離を縮め、その先にどんな関係が待ちうけるのか? 表紙のように、穏やかで幸せな時間が訪れる日がくるのを楽しみに読み進めたい。



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。今秋公開予定の内村光良監督『金メダル男』の劇場用プログラムに参加しております。

単行本情報

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