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『響 ~小説家になる方法~』 第5巻 柳本光晴 【日刊マンガガイド】

2016/12/19


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『響 ~小説家になる方法~』


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『響 ~小説家になる方法~』 第5巻
柳本光晴 小学館 ¥552+税
(2016年11月30日発売)


15歳の高校1年生・鮎喰響が新人賞に応募した小説『お伽の庭』は、それを読んだ審査員の人生観を変えるほどのインパクトを持った傑作だった。
文芸部の先輩で世界的な人気作家のひとり娘・祖父江リカは、単行本『四季降る塔』で華々しくデビューを果たし大ヒットを記録する。
リカは響に芥川賞を狙いたいと打ち明けるが、響はリカの作品をつまらないと断じる。
2人の間に亀裂が入ったまま、『お伽の庭』が芥川賞・直木賞にダブルノミネートされる――。

『響 ~小説家になる方法~』は副題に「小説家になる方法」とあるが、これを読めば小説家になれるといったハウツーものではなく、全身小説家としての響の生き方に焦点を当て、響と響の作品に感化され変節していくまわりの様子を描いた物語。
とにもかくにも主人公・響のキャラクターが魅力的だ。
ブラッシングがいき届いていないのか、毛先の跳ねた髪の毛。空気はあまり読まない。小学館から出ている単行本なのに第5巻の表紙で読んでるのが講談社文庫なくらい空気は読まない。

しかし、ひとたび興味を持った対象に対してはすごみを感じさせるほどの本気で挑み、好きなものに対しては自分の気持ちをまっすぐに伝える。
両足を肩幅に開いて立つ響の姿は、全世界に対していつでも臨戦態勢をとっているかのようでとても勇ましく素敵だ。

不良の先輩がいった「殺すぞ」という売り言葉を真に受け相手の指をへし折ったり、リカにしつこくからむ新人賞選考委員の顔面に蹴りをぶちこんだり、新人賞受賞式で喧嘩を吹っかけてきたもうひとりの受賞者をパイプ椅子でボコボコに攻撃するなど、エキセントリックでバイオレンスな言動が目立ちそれが魅力的な響。
『お伽の庭』がダブルノミネートされたことで、親友のリカから「別に私達、お友達ってわけでもないし」と捨て台詞を吐かれる。
今までの響であれば即座にやり返す場面だが、このあとの仲直りのシーンは感動的だ。

そしてこの巻、響の「へへー」が出ます。
動物園の「ふれあいコーナー」で初めて見たアルパカを抱きかかえての「へへー」。
第4巻で猫を捕まえた時以来の「へへー」です。
満足げにほほ笑む響は、年相応の少女らしくてとてもかわいい。

この巻では文芸部の1年生・花代子が見せる鈍感力もいい。
リカや響のような才能とは無縁な花代子は、純粋に小説が好きで楽しく文章を書いている。
だからバンパイヤを題材にした自作小説を響に厳しく批評され、あげくのはてに同じ題材ではるかにレベルの高い作品を響が書いてきても、いち読者の立場でニヘニヘと物語とキャラクターを楽しみ、響にむかって堂々と「これパクってもいい!?」といってしまえるのだ。

仕事としての「小説家」になれるかどうかを芥川賞の受賞に託すほかの候補者たちをよそに、受賞結果に興味のない響。
芥川賞にかける候補者たちの思惑と緊迫が高まるほど、響の交友関係の描写が楽しい。



<文・秋山哲茂>
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』『ドラえもん深読みガイド』(小学館)、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進!』(徳間書店)など。構成を担当した『てんとう虫コミックスアニメ版 映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』が発売中。4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士(見習い)。

単行本情報

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