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2月28日は「バカヤローの日」 『歴史劇画 大宰相』を読もう! 【きょうのマンガ】

2017/02/28


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

2月28日はバカヤローの日。本日読むべきマンガは……。


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『歴史劇画 大宰相 第1巻 吉田茂の闘争』
戸川猪佐武(作) さいとう・たかを(画) 早坂茂三(解説) 講談社 ¥980+税


2月28日は「バカヤローの日」。「バカヤロー!」と怒鳴るのを推奨する日ではありませんので誤解なきよう。

1953(昭和28)年の2月28日、時の首相・吉田茂が衆議院予算委員会で「バカヤロー」と発言。これがきっかけとなって内閣不信任案が提出・可決され、3月14日に衆議院が解散……歴史に名高い「バカヤロー解散」の発端となった日なのである。
このエピソードからは吉田茂がキレて「バカヤロー!」と怒鳴ったかのような想像をしてしまうが、実際のところは議員の質問に、つい「バカヤロー」と“つぶやいた”程度だったらしい。
しかししっかりマイクがそれを拾ったのを、質問していた議員がとがめたて、コトが大きくなってしまったもよう。

吉田茂といえば戦後の日本復興の立役者。1946(昭和21)~1947(昭和22)年、および1948(昭和23)~1954(昭和29)にかけて計2616日間、総理を務めた人物だ。これは歴代内閣総理大臣在職日数ランキング4位にあたる数字。
『大宰相』は、ベストセラー『小説・吉田学校』をものした戸川猪佐武の原作を担当、いわずと知れた劇画の巨匠であるさいとう・たかをがマンガ化した全10巻にのぼる大作だ。
敗戦直後の混迷期に始まる第1巻は、アメリカからの要求を受けいれざるをえない状況のなかで、決してただいいなりになるのではない吉田の政治手腕にフォーカスした内容だ。

戦前派の政治家に不信をいだき、党内にも敵の多かった吉田は積極的に官僚や財界人を登用し、政治家として育てあげたことでも知られる。
吉田が自身の体制を固めるべく築いたグループ、通称「吉田学校」の面々には池田勇人、佐藤栄作、田中角栄らがおり、吉田が引退したあとも政界を牽引していく人材を輩出している。

「きみはまったくワンマンだ」といわれた吉田が「しかし、総理というものはそうあるべきだ……」と漏らすシーンは印象的。「ワンマン」はいただけないかもしれないが、そういわれるくらい強いリーダーシップを持った人間も必要ではないか。

ともかくこの『大宰相』、読み始めたら止まらない! 今の日本をつくりあげてきた戦後政治の流れを知っておくにはもってこいのテキストである。



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」

単行本情報

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