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『恐竜の飼いかた』 第1巻 いしがきのぼる 【日刊マンガガイド】

2017/03/04


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『恐竜の飼いかた』


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『恐竜の飼いかた』 第1巻
いしがきのぼる 徳間書店 ¥620+税
(2017年2月13日発売)


漫画家の奥村ねね子は、妹のフキ、猫のコスケと暮らしていたが、そこに浮気性の父親が恐竜「びわ」を連れたもうひとりの妹・よりかをつれてくる。

身近ないきものとして恐竜が存在している世界で暮らす三姉妹を描く本作は、1980年代のイラストレーションを彷彿とさせるスタイリッシュな画風と、婚活に苦しむねね子の姿に象徴される生活臭のとりあわせが現代的。

著者のあとがきでは、キャラクターのモデルはテレビドラマ『やっぱり猫が好き』からとられているとのこと。たしかに『やっぱり猫が好き』も三姉妹と飼い猫が中心になっていた。
また、両親のいない家に暮らす姉妹のもとに幼い「異母妹」がやってくるという構成は、吉田秋生『海街diary』を思わせる。

本作では、恐竜は犬や猫などの比較的メジャーなペットとして描かれており、飼い主のいない「野良恐竜」の概念も登場する。また鯨肉ならぬ竜肉として、スーパーで恐竜の肉が格安で売られていたりもする。そのお味や調理法のほうは本作を読んで確認していただきたい。

じつは、現代の生物学の研究の結果、恐竜は鳥と同じ先祖を持っており、極論するとまだ絶滅していないとも言えるらしい。もちろん、現代の街なかに野良恐竜はいないし、スーパーに恐竜の肉も売られてはいない(鶏肉を恐竜肉だと思って食べるのはアリかも知れないけど)ので、本作が非現実的な設定を採用しているのは間違いない。

非現実的な設定といっても、家にひとりでいる時kにトイレに入って、ドアの向こう側で恐竜が寝てしまってドアが開かなくなる、といったようにリアリテイのあるエピソードにうまく恐竜を組みこんでおり、楽しく読めてしまうから不思議だ。

ねね子の担当編集者の角藤さんや、恐竜大好きのペット向けモールのマネージャー沢木さんが、ともにねね子にアプローチをかけてきたかと思ったら、モンゴルに行った父からお見合い話が持ち上がるなどラブコメ展開もあり、今後の展開が楽しみ。
猫のコスケと恐竜のびわの共棲も、今後注目していきたいポイントだ。



<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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Twitter:@n11books

単行本情報

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