複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。
今回は、「かっぱ寿司、ロゴを大幅に変更!」について。
『カッパの生活図鑑』
ヒサクニヒコ 国土社 ¥1,500+税
(1993年3月発売)
この10月、世間を揺るがす大事件が起きた。
賢明な読者の方はもうお気づきだろう。
そう、かっぱ寿司の「脱カッパ」である。
これまで「かっぱのマーク」で知られたかっぱ寿司が、今年10月からロゴを変更。金と赤の皿をイメージした新ロゴを採用し、企業イメージの刷新をはかった。
これまで30年以上続いたイメージをリニューアルするのだから、たいへんな決断があったに違いない。
しかし、ロゴマークが変わっても「かっぱ寿司」の名前はそのままなので、多少の混乱があったとしてもHEAD-CHA-LAで、へのへのカッパなハズ。
ともあれ、カッパは日本人に古くから親しまれてきたキャラクターだ。それこそマンガの世界では、さまざまなタイプのカッパが描かれてきた。
そこで今回は、カッパが出てくるマンガを大特集!
昨年、水木しげる御大が亡くなった際には『河童の三平』を紹介したが、今回はその他のカッパ作品をピックアップしていこう。
『カッパの飼い方』 第1巻
石川優吾 集英社 ¥800+税
(2003年10月17日発売)
まずは石川優吾『カッパの飼い方』。
タイトルに「飼い方」とあるように、まるでカッパを実在する動物のように描いているのが特徴的。
この作品では、カッパはイヌやネコのように飼われており、観察日記的にカッパの生態が描かれる。作中のカッパは動物だが、人間の幼児のようでもあり、主人公かぁたんはとても愛らしい。
作品世界が少し昔の日本を舞台にしているので、ノスタルジックな雰囲気と相まって、カッパの住まうファンタジックな世界を演出する。
くちばしをパコンと鳴らすカッパならではの擬音などのアイデアも豊富で、カッパが実在すると錯覚してくるほど。「カッパ飼いたい!」と思うことは必至だ。
『悟空道』 第1巻
山口貴由 秋田書店 ¥900+税
(2007年9月20日発売)
そして『西遊記』の沙悟浄もまたカッパである。
そもそも原作の『西遊記』では水の妖怪だったが、日本ではこれがカッパであると解釈された。したがって沙悟浄がカッパの姿で描かれるのは日本版『西遊記』だけ。
山口貴由『悟空道』に出てくる沙悟浄は、そんなカッパ型のエクストリーム進化形だ。
黒いフードを被ったイケメンの半人半妖。キャラ紹介では「お師匠(三蔵法師)に焦がれてます」とか、キザなセリフもサラッといってのける。背中の甲羅とか頭頂部の皿とか、いわゆるカッパらしい特徴はまったく持ちあわせていないが、水中戦を得意とする。
『ヒゲとボイン Forever』
小島功 KADOKAWA ¥1,200+税
(2015年8月3日発売)
さて、かっぱ寿司と同様にカッパをイメージキャラクターに使用した企業といえば、日本酒の「黄桜」も忘れてはならない。ルンパッパである。
同社のマスコットは、最初は清水崑(『かっぱ天国』など)が担当し、清水の死後に小島功が引き継いだ。小島は小学館「ビックコミックオリジナル」の巻末で、1974年から2011年までの長きにわたって『ヒゲとボイン』を連載。新聞や雑誌を舞台に戦前から連綿と続いてきた「大人マンガ」の香りを、21世紀まで伝えたマンガ界のレジェンドだ。
ちなみに安野モヨコは小島功の姪である。
なお、黄桜の公式ホームページには、かつて放映されたカッパCMのギャラリーが設置されている。ぜひともチェックしよう。
かっぱ寿司がロゴにカッパを使わなくなり、黄桜がカッパCMを放映しなくなり、さらには光文社がカッパ・ブックスを刊行しなくなった今、カッパを大々的にフィーチャーするカッパ・カンパニーの座は空位といえる。
といったわけで企業のみなさま、カッパを呼びだしてはいかがでしょう。
その際には、どうかKappaと発音してください。
えっ、芥川オチ?
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama