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『侠飯』 第1巻 福澤徹三(作) 薩美佑(画) 【日刊マンガガイド】

2017/03/02


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『侠飯』


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『侠飯(おとこめし)』 第1巻
福澤徹三(作) 薩美佑(画) 講談社 ¥580+税
(2017年2月6日発売)


生瀬勝久の主演でドラマ化もされた福澤徹三の同名ベストセラーを、トキワ荘プロジェクト出身の新人・薩美佑(さつみ・ゆう)がコミカライズ。
2月6日の第1巻発売後、ほどなく重版出来と、小説版・ドラマ版に負けず劣らず絶好調だ。

就活まっただなかで、各企業から絶賛ご活躍をお祈りされているFランク大学生が、ヤクザ同士の抗争に巻きこまれるところから物語はスタート。柳刃組組長の柳刃竜一、若頭の火野丈治というヤクザ2人に、恩を着せられる形で自宅へ匿う流れとなってしまった若水良太は途方に暮れるが、柳刃がふるまってくれる手料理だけは絶品で、舌鼓を打ちまくる日々が始まる。

トンデモ設定ではあるのだが、考えてみれば部屋住み(事務所等に寝泊まりして、上の人間の世話をする下っ端)を経験しているヤクザが料理上手になるのは自然の摂理。
柳刃のように、うまい料理を手早くつくることに研究熱心となる若い衆がいてもおかしくない。

缶詰のオイルサーディンに醤油をたらして一味をかけ、レモンを乗せて缶のままトロ火にかける即席のツマミ、ラードと味覇(ウェイパァー)を使った炒飯、油にこだわったベーコンエッグ、レトルトを格上の味に仕上げる混ぜカレー。柳刃が披露するのはどれもこれも、読んだその日に実践可能な男の料理ばかり。腹をすかせて読むと、脳内に変な汁があふれてきて危険だ。

おいしいごはんをふるまってくれる一方で、柳刃は良太の自堕落な生活態度を徹底的にたたき直していく。洗い物、掃除、米のとぎ方、朝飯を食べることの大切さ……。
そして底辺大学へ通っている自分を卑下し、就活に対して消極的な良太に、「面倒なことを避けて通るヤツは成長しない」ことを教えていくのだ。

とまあ、こんなふうにカッコいい柳刃ではあるが、ヤクザはヤクザ。一般人の部屋に無茶をいいながら居座り、傍若無人に振るまっていることには違いない。
多大な災難に見舞われているのにもかかわらず、なぜか少しずつ人間として成長していく良太。多種多彩な侠飯だけでなく、この関係もくせになる!



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。

単行本情報

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